第350話 今すぐ私をさらって

「今すぐ私をさらってくれない?」


突如、女が話しかけてきた。これは告白ってやつか?モテる男は辛いね。


「なぜ?俺に惚れたの?」

「いいえ。あなたみたいなブサイクには興味ないわ」

「ブサ……このっ……」

「まあ別にあなたでなくても誰でもいいの。私を誘拐して、私の家族に身代金を要求して欲しい。それだけ」

「どうして誘拐して欲しいんだ?」

「家族に心配をかけたいの」

「わからねぇな。わざわざ自分の家族に心配をかけるなんて感覚が」

「あなたみたいな家族に愛されている幸せな人には、私の気持ちなんて分からないわよね」

「つまりあれか。家族に愛されてないと思ってるのか?」

「そうよ」

「……家族ってのは、時々難しいよな。お互い遠慮がねぇからな。よし、ならばこうしよう。お前、俺の家族になれ」

「えっ?」


――と、まあこれが俺の嫁との馴れ初めよ。あんまり人には、話したくねぇんだ。気恥ずかしいからよ。

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