第338話 傘屋

近所に新しくオープンしたのは、傘専門店だった。この世の中、傘なんてコンビニでも買えるし、そこら辺に大量に溢れている。これは、すぐに潰れるんじゃないかな。だが私は興味本位で、一度だけ傘屋に入ってみる事にした。


「いらっしゃい」


店には、おじさんが一人。客は私以外いない。


「何かお探しで?」

「あー……いや、どんな傘置いてあるのかなって思って」

「うちの傘は特殊なんだよ」

「はぁ……特殊……ですか?」

「傘っていえば雨を凌ぐ傘を普通思い浮かべるだろうけどね。うちの傘は、嫌いなものを凌ぐ傘なんだよ」

「嫌いなもの……?」

「あんた何が嫌いなんだい?」

「……男が嫌い。浮気されてもう信用できないから」

「なるほどねぇ。ちょっと待ってな。えーと……男除けの傘はっと……おお、これだ」


私は男除けの傘を買った。すると不思議なことが起きた。傘を差していると男が逃げていくのだ。面白い買い物をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る