第307話 酔書

中国武術のひとつである酔拳。酒に酔ったような独特の動きをするこの武術を、私はどうにかして応用できないものかと考えた。私は小説家である。普段は胸がキュンキュンして、結ばれるか結ばれないかの絶妙なバランスを取りながら展開されていくラブストーリーを書く事を得意としている。しかし私が出版社から求められたのは……


「先生。今年は、先生の10周年記念の特別な年です。いつものラブストーリーとは、一味違う作品を是非お願いします」


私は、もちろん頑張って書こうとした。しかしなかなか筆が進まないのだ。だから私は、酔拳からヒントを得た。その日は午前中から酒を飲んだ。こんな事をするのは、人生で初めてだ。良い感じに酔ってきた。そして私は随筆を始めた。すると頭はフワフワしながらも、スラスラと文章を書いている私がいた。その勢いで私は、急転直下のラブストーリーを書いた。酒を飲んで書いた小説は、歴代最高の売上となった。

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