第306話 お茶好き弁護士、西園寺五郎

「うん、この独特の渋み。良いお茶ですね」


西園寺五郎は、お茶が好きだ。世界中のお茶を取り寄せて味わう事が趣味の弁護士だ。事務所のデスクに置いてある電話機から着信音が聞こえる。


「先生、痴漢の冤罪だという男性からの弁護の依頼です」

「ふむ……。痴漢の冤罪は、男性側が圧倒的に不利な内容になる事が多いです。かなり厳しい戦いになるかもしれませんね。分かりました。ティータイムは終わりのようですね。さて行きましょうか」


西園寺五郎は、依頼人の男性に会いに行った。


「先生、助けて下さい!!僕は本当に痴漢なんてやってないんです。僕は無実です」

「落ち着いてください。その当時の状況を順番にひとつずつ、ゆっくり教えてください」


お茶を愛し、常に心穏やかな弁護士、西園寺五郎。彼の最大の武器は、心のゆとりだ。心に余裕があれば突破口は、必ず開ける。それが彼の信条だ。ただしトイレが近い。それが彼の弱点だ。

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