第274話 絶対に笑わない男と絶対に笑わせる男

「笑えよ」

「絶対笑わない」

「いや、笑わせる」

「やってみろよ」


服を脱いで上半身裸になった。


「筋肉芸か?」

「甘いな。どう見ても俺みたいなぽっちゃり体型にできる芸当じゃないだろ」

「ならなぜ脱いだ」

「今から絵を描く」

「だからなぜ脱いだ」

「俺は絵を描く時、裸じゃないと描けないからだ」

「天才肌か」

「天才裸と呼んでくれ」

「…今のはちょっと危なかったぞ。もう少しで笑うところだった」

「ダメか」

「ダメだな」


ズボンを脱いだ。白いブリーフパンツ一枚。


「パンツ一丁で何をする気だ」

「俺のパンツに絵を描く」

「まだ絵の話を引っ張るか」

「さあ白いキャンパスに絵を描こう」

「白いブリーフの間違いだろ」

「どんな絵を描いて欲しい?」

「泣く女」

「作者は?」

「ピカソ」

「お前のお母さんも泣いてるよ」

「その言葉そっくりそのまま返すよ」

「愛してる」

「唐突にその格好で言うな。怖い」

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