第239話 終わりの雨
雨が終わらなければいい。そうすれば君と一緒に傘を差して、いつまでも寄り添って歩けたのに。しかし空気を読まない雨は、ピタリと止んでしまった。
「雨止んだね」
「そうだね」
晴れた空は綺麗だった。なぜだろう。
雨が降っていた時は、君との会話も弾んでいたはずなのに、晴れたら途端に君と話すのが照れ臭くなった。さっきまであんなにも馬鹿な話をして笑い合っていたのに。
「もうすぐお別れだね」
「うん……」
君は明日、遠くへ転校してしまう。その事を考えると涙が頬を伝う。
「泣いてるの?」
「……いや、さっきの雨だよ」
僕は小さな嘘をついた。
「そっか……。じゃあ私、行くね。今までありがとう!」
君は涙も見せずに一度振り返って歩いていく。
「……うん。元気でね」
こんな言葉しか言えなくて本当にごめん。気の利いた別れの言葉が思いつかなかった。
僕は、歩いていく君の後ろ姿を黙って見ていた。
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