第231話 希少庁

希少庁。それは新しくできた国の行政機関の一つである。日本に存在する希少価値のある人物や物、土地といったものを守る事を目的として設立された機関である。希少庁に登録されると、法に基づきそれらは国の保護対象になる。希少価値の継続と安定を目指している。そんな希少庁に配属となった私は、今日も沢山の申請書に目を通すのであった。


「独自の製法で作られた饅頭を作れる熟練和菓子職人、大下さんか。確かにこの人は、希少だな。承認」


次は?


「ミステリー小説の女王、石井石子。確かにこの人は、希少だな。承認」


次は?


「ぐずる子供を素直に言う事を聞かせる事ができる保育士、近藤さん。希少だな。承認」


次は?


「いつもニコニコ。おじいちゃんおばあちゃんに人気の男性介護士、田村さん。希少だな。承認」


……ったく日本には、希少な人で溢れてるな。


「ねぇ。先輩。もう日本人全員登録しちゃっていいですか?」

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