第106話 鴎

晴天の青空。雲一つない良い天気の春の事。良い天気だ。空を見ると、一羽の鴎が気持ちよさそうに羽を広げて自由に空を飛んでいた。


「良いなぁ。俺もあんな風に自由に空を飛びたいなー」


そう独り言を呟くと、その鴎は、空から徐々に地面に近づいてきて、ついに俺の目の前に降りてきた。


「お兄さん。自由に空を飛びたいんですか?だったら私と入れ代わりませんか?私は、その足で自由に地面を歩いてみたい」

「わっ!!か、鴎が喋った!!」

「こんな良い天気ですからね。そりゃ鴎だって喋りますよ」

「いや、天気は関係ない気がするが……」

「それでどうします?入れ替わりますか?」

「面白そうだ。入れ替わろう」


こうして俺は、鴎と入れ替わった。自由に空を飛ぶ。最高だ。飛んで遠くに行っているうちに、鴎はどこかに行ってしまった。俺は自分の体を見失った。


「しまった!俺の体が盗まれた!」


俺は、今も鴎として生きている。

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