第80話 再会の虹

それは都市伝説のようなものだと思っていた。六月の梅雨が明けてからの最初の雨が上がり、虹が出た日、空に向かって祈りを捧げれば、また会いたい人に出会えるらしい。俺にはどうしても会いたい人がいた。それは、かつての恋人だ。仕事の都合で海外に転勤する事になり、彼女に一緒に来て欲しくてプロポーズしたが、結婚する事はできないと断られた。どうしてダメなのかと理由を聞いたが、彼女は最後まで教えてくれなかった。もう二年前の事。過去の事だ。未練がましいとは思うが、彼女以上の女性に出会う事なんて一生ないと思った。せめてもう一度だけ会いたいだなんて思った。

再会の虹が出た。俺は虹に祈りを捧げた。もちろん、ただの都市伝説だからあまり信じていなかった。空を見上げると、上空から白い翼が生えた彼女が地上に降りてきた。


「ごめん。私、天使だったんだ。だから結婚できなくて」


ははっ…。

どおりで魅力的な女のはずだ。

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