第38話 振りこむ王様
「立直」
渋い声を発して勢いよく立直を宣言した職場の先輩社員で対面にいる大津さん。この声色からして大津さんは、大きな手を張っているのだろうか。なんだか嫌な予感がして僕は、勝負を降りた。現物を切ってこの局を逃げ切ろう。
「おいおい、片山。逃げるのか?」
大津さんは僕の方を見て、やれやれという感じで見る。
「いやー、なんだか大津さんの手、高そうな気がするんですよね。ここは無難に降りますよ」
「それだ、ロン!!」
僕の上家にいた佐々木さんが、大津さんの捨て牌でロン上がり。
ダマの七対子だった。
「くー、ついてねぇ。ダマかよ。佐々木、やりやがったな」
「流石は王様。へへっ、頂き」
佐々木さんは、大津さんの事を王様と呼ぶ。その理由を今日、僕は初めて知った。
どうやら大津さんは、今まで一度も立直をかけてから上がれた事がないという振り込みの王様だったのだ。
麻雀とは面白いものだ。
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