第33話 真夜中戦争

世界が漆黒の闇に覆われている時間帯。


プーンッ。


俺の耳元に現れたお前。

人は眠る事でストレスが解消され、明日生きていく為のエネルギーが回復する。もしも眠る事を邪魔する者がいるとするならば、それを悪と呼ばずして何と呼ぶ。

だが俺は、心が広い男。一度眠る事を邪魔されたくらいでは、わざわざ殺生をしようとは思わない。


プーンッ。


また右耳か。

二度も邪魔するとは…。流石の俺も少し手が出る。手で振り払う。

しかし空振り。お前が手に当たった感触はない。


プーンッ。


次は左耳か。今度は素早く反応し、音が出たのと同時に手で握り潰す。

俺の神速の手の前に、お前は絶命したはず。

しかし手を見ると、そこにお前の姿はない。


プーンッ。


右耳。そして左耳へ。近くを連続で飛び回って「私は生きている」とアピールするお前。


いいだろう。戦争だ。

俺は部屋の明かりを点け、蚊取り線香と殺虫剤を手に取った。

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