第7話 あばばばば

私と嫁の間に待望の赤ちゃんが生まれた。とても可愛い。この世の何よりも大切な存在だ。この子の為に頑張ろう。私は育児に積極的に参加した。オムツも替えるし、食後にゲップさせる事も上手くなった。


「ばぶ。あばばばば」


この子と早く喋れるようになりたいな。早く言葉を喋るようにならないかな。君は今、なんて言ってるんだい?


「あばばばば。ばぶ」


それから息子は、一歳になった。


「あばばばば。よむ」


少しずつ喋れるようになってきた。まだ拙い言葉を使って、私に一生懸命話そうとする仕草がとっても愛おしい。


「あばばばば。よみたい」

「んー?何ー?」

「あばばばば」

「んー?」

「芥川龍之介のあばばばばが読みたい」


息子は将来、文豪になるかもしれない。

私は今、仕事帰り、書店で芥川龍之介のコーナーで本を探している。

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