第14話
戦力アップを期待して
「
「う……徒歩での旅だったので乗ったことがないんだ」
「それにしたって下手すぎるだろう。あんなに動けるからバランス感覚も良いと思ったのに」
「仲間に身体強化の魔法を掛けてもらって走った方が速いんだ。それにしてもすまない。暴走族に必須の技術なのに会得できなくて」
身元も怪しい上に金もない
「まさか補助輪を付けるわけにもいかんしな」
「なにか装備を施せるのか? それなら是非にお願いしたい」
自分より年上っぽい男にキラキラした目で見つめられると、罰ゲームでもないのに補助輪を付けるのが申し訳なく思えてくる。
「いや、それは本当の最終手段だ。
「……ありがとう! きっと期待に応えてみせる!」
そう言ってペダルを
「イタタ。でも今までで一番進んだと思わないか?」
「このペースなら三年くらいでまともに乗れるようになるかもな」
「三年かー。聖剣の力を使いこなすよりは簡単そうだ」
カラッとした笑顔でそこまで前向きになられると、自転車センスのなさが全然気にならなくなるから不思議だ。
「そんな悠長なことを言ってたら魔王が世界を支配するんじゃないか?」
魔王の件は話半分にしか思ってないのに、ついそんな冗談を口にしてしまった。
「たしかに!
気合を入れて体勢を立て直すと、今度は少しふらつきが減って更に走行距離が伸びた。結局は派手に転んだけど、ようやくコツを掴みだしたのか成長が早い。
「暴走族の活動を休んでまで練習に付き合ってくれてるんだ。そろそろ
「……ありがとよ」
「
完全に口から出まかせだが、あいつらは変に納得してくれて暴走行為を止めることに成功していた。
「このまま
「
「いや、なんでもない」
「それにしても
「率いてなんていないよ。ただ勝手に付いてきてるのをどうにか抑えてるだけだ」
「それがすごいんだ。彼らは自分の意志で
「はは、褒めても何も出ないぞ?」
オレには人に褒めてもられることなんて何一つない。自分自身が一番よく分かってるんだ。
「もしよければ、
「……そうだな。
この
こいつなら信頼できる。そう思いたくなる何かを感じていた。
「あれは一年前。オレがまだ空手をやっていた頃の話だ」
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