第13話
今まで感じたことのない胸の鼓動。ボタンが勝手に弾け飛び、ブラのホックも壊れてしまった。
「なになに! 待って!」
あわてて腕でおっぱいを隠すが、この大きすぎるおっぱいに対して私のパーツは小さすぎる。乳首を隠すのが精一杯で本体はほとんどこぼれてしまった。
「
「任せろって、任せたらただの露出狂じゃない!」
「一瞬だ、あの男の記憶には何も残らぬし、
「……信じていいのね?」
「余を誰だと思っておる。歴代最強の魔王だぞ」
あーあ、結局私はこの魔王おっぱいを気に入ってるのかな。最低なやつだけどおっぱいから聞こえた言葉をすんなりと受け入れる自分がいた。
「一発殴りたいと思っていただろう? その願い、一発と言わず百発くらいで叶えてやる」
「いや、暴力はやっぱりダメ! あとで問題になる」
「余は
「な、なにって、それは……その……」
突然現れた迷惑なやつ? でも実は頼りになるやつ? こんな時にそんな質問され
ても困るよ。
「余は
「そ、そうよね。おっぱいハンマーもケガ人ゼロだしね」
精神的な話じゃなくて肉体的な話だったかー!
「わかったなら早くあの男に近付け」
腰を抜かして尻もちを着いている青年と少しずつ距離を詰める。
「さ、さっきから誰と話してるんだ!」
「驚かせてごめんね。でも、これからきっとあなたの望みが叶えられるわ」
「お、お、お、おっぱいを揉ませてくれるのか⁉」
こんなに追い詰められてまだおっぱいへの欲望があるなんてすごい執着心。この情熱を別のことに活かせていれば良かったのに。
やり方を間違えるとどんどん悪い方向に進んで行く。それを痛感せざるを得なかった。
「ここまで近付けば十分だ。
魔王に言われた通りにしゃがむと彼に谷間を見せつけるように姿勢になってしまった。
「なんだよ。も、揉むぞ!」
こんな状況でもまだおっぱいに凄む。
「本当に揉む者は、揉むと言う前に揉むものだ」
「あ、あ……ちくしょー! さっきから誰なんだよ!」
「警察官としてはこのまま逮捕したいんだけど、一人の女としてはこのまま引き下がるのは悔しいのよね」
「まさか警察官が殴るのか? はは、それはいい。そうすれば俺が被害者だ。はは、ははははは!」
乾いた笑い声を上げる青年に魔王は言い放つ。
「もう黙れ」
魔王がそれだけ言うと、私は一瞬だけ乳首から腕をどけた。何も言われなかったけど、魔王に任せるというのはこういうことだ。
胸に力が集中しているのがわかる。魔王は本気だ。
そして、次の瞬間。私は目を疑うような光景を目にする。
ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん!!
ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん!!
ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん
ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん!!
ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん
ぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよんぽよん!!
二つのおっぱいが交互にものすごい速さで動き青年の顔を打った。
これだけ皮膚と皮膚がぶつかったら痛みがありそうなものだけど、少なくとも私地震はおっぱいに痛みを感じていない。彼は……なんか嬉しそうだ。
「どうだ。余のおっぱい百裂拳を」
魔王が技名をキメると私はハッと我に返り乳首を腕で隠す。
「本当にこれ大丈夫なんでしょうね? 気絶してるみたいだけど」
「外傷はない。ただおっぱいの感触を連続で味わって幸福感に満たされているだけだ」
「それって結局犯人の思うつぼなんじゃ」
「余を誰だと思っておる。ただおっぱいで顔を打っただけではない。しっかりと案込むの魔力を注いでやったわ」
「はぁ⁉ なにそれ。そんなことしたらこの人は」
「しばらくは腹痛に悩まされるであろう。しばらくがどれくらいかは、余にもわからぬがな」
ひとまず命の危険はなさそうでよかった。ひったくり犯はひとまずこれで一件落着でいいとして問題は……。
「い、今のは……」
プラートルさんがすごい形相で私を、いや、私のおっぱいを睨んでいる。
「デカ乳はそんなことまでできるというのですか」
「え?」
「相手に傷を負わせることなく制圧する。わたくしが何年も聖なる魔法の修行をしても至ることができなかった平和的解決への糸口もいとも簡単に……!」
「あのー。プラートルさん?」
魔王から事情を聞いてるからそんなに驚きはしないけど、こんな平然と魔法とか言っちゃっていいのかな。
「プラートルはな、とても優秀な神官なのだがたまに暴走しておったようだ」
「って、普通に喋ってるけどいいの?」
「あいつは余に気付いておっぱいを睨んでおるのではない。単純に巨乳を目の敵にしておるだけだ」
えーっと、それはつまり。
「デカ乳さん」
「は、はい!」
あまりの鬼気迫る声に思わず返事をしてしまった。
「この呼び方で反応するなんて、やはり自分の胸が大きい自覚があるようですわね」
「いや、今ここにいる意識のある人は私とプラートルさんだけだし……」
正確には魔王もここにいるけど話がこじれるから黙っておこう。
「初対面のわたくしに親切に声を掛けてくださったこと。暴漢から杖を取り戻してくださったことには感謝いたします」
落ちていた杖を拾い上げると深々と頭を下げた。
「あ、いえ、とんでもないです。これが仕事ですし」
「し・か・し!」
「ひぇっ!」
怒りと嫉妬に満ちた瞳でおっぱいを睨まれるとやっぱり怖い。
「わたくしはそのデカ乳が許せません。そのようなものがあるから世界の秩序が乱れるのです」
ドーンッと仁王立ちをするせいでプラートルさんの平面がより強調されてしまっている。
「信じてもらえないかもしれませんが、わたくしは魔王を追ってこの世界に来たのです。今度こそ魔王を滅ぼし世界を平和にする。それがわたくしの目的です」
「そ、そうなんですか」
普通の人なら話半分に聞き流すところだけど、実際に魔王がおっぱいになっている身としてはなんともリアクションに困る。
「そして今、新たな目的が生まれました。この世を混沌に
魔王と共に滅するという言葉に冷や汗が止まらない。この人、本当はこのおっぱいが魔王だって気付いてるんじゃないの?
「あの、もしかして私もその魔王と一緒に消される感じなんですか?」
「いえいえ。罪なのはデカ乳だけ、あなたは心優しき人間です。その悪しき肉の塊をいつかわたくしの術で次元の彼方に消し飛ばして差し上げます」
「え⁉ そんなピンポイントなことができるんですか?」
「いつか。と言ったでしょう。そのデカ乳に知性を吸い取られているのですか? そんな高度な術はそう安々と習得できません。あなたごと次元の彼方に飛ばすのなら今すぐにでも実行できますけど」
ニヤリと黒い笑みを浮かべるプラートルさん。本当にこの人が聖なる神官なのかあやしくなってきた。
「ははは、それはすごい」
おっぱいになった魔王がこれだけの力を発揮できるんだから、それの魔王を追い詰めたプラートルさんもすごい人なんだろう。あまり刺激しない方が良さそうだ。
「ところで、いつまでそのようなハレンチな格好でいるおつもりですか? まさかそのまま人通りのある場所を歩いて誘惑する気じゃ……」
「そんなことしません!」
反論したもののおっぱい百裂拳でブラも制服もボロボロになってしまった。
「デカ乳に力を貸すのは釈然としませんが、これで一時しのぎにはなるでしょう。拘束魔法なので苦しいですが我慢してくださいね」
プラートルさんは杖を構えると呪文の詠唱を始めた
ブツブツと何語かわからない言葉を続けるうちに胸に周りに白い光の糸が何本も現れて少しずつ太くなっていく。
「これは……縄?」
次の瞬間、光でできた縄におっぱいをギューっと締め付けられた。
「うぐっ!」
「これでも力を弱めたんですよ? 苦しいのはあなたの胸が大きいせいです」
拘束魔法と言われたわりには全然動けるし、おかげでおっぱいを隠すことができた。
「あの、ありがとうございました。本当は私がちゃんと助けないといけないのに」
「これで貸し借りはなしです。せいぜいそのデカ乳で人生を謳歌することですね。何年かすれば垂れてただの重りになるんですから」
そう言ってプラートルさんは去っていった。どうやらこのおっぱいが魔王だと気付いてないみたいだったけど。
「ぐぬぬ…プラートルめ。このような光で余を拘束するとは、やはり
結果的に魔王を攻撃してるのが恐ろしい。このおっぱいが魔王だとバレたら私はどうなるんだろう。ちゃんと私は生かしてもらえるのかな。
ちょっとした不安を抱きながら、異世界から来た神官・プラートルさんを巻き込んだひったくり事件は終結した。
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