第9話
魔王おっぱいの力を借りてひったくり犯を捕まえてからというもの、この辺りではひったくりが増加していた。その度に私が出動しておっぱいハンマー(逃げる犯人をおっぱいで推し潰す技。魔王が命名した)をお
魔王の力を借りる代償に命を削っているとか、心が闇に侵食されているとか、そんなこともなくすこぶる健康に職務を全うしていた。一時期は肩こりを感じるようになったけど、それを魔王に愚痴ったら、
「余が重力に逆らえば楽になるのか?」
なんて優しさを見せてくれておっぱいの負担が軽くなった。おっぱいが意思を持っているからこその芸当だ。
そんなことがありながら何人もひったくり犯を捕まえたけど、あとで事情を聴くと全員が「満足した」と答えている。
「これじゃあ私が諸悪の根源じゃない!」
ひったくりをすれば巨乳警察官のおっぱいを堪能できる。そんな話がネット上で広まり度胸試し的に罪を犯す人間が増えてしまった。
「まさか魔王、これがあなたの作戦なんじゃ」
正義のために使えるのか、はたまた悪の権化なのか、立ち位置がよくわからなくなってきた魔王こと自分のおっぱいに問い掛ける。
「いやいやまさか! 人間がこんなにも余に……いや、
「ふーん。まあそういうことにしておいてあげる」
疑いの眼差しを向けたもののおそらく本当だろう。どうやら魔王と人間では性的思考が違うらしいし。
「サキュバスのような女ならともかく、
「あなたをお仕置きする時は私にもダメージがあるんだから、あんまりふざけたことは言わないでね?」
若く見られるのは嬉しいけど子供扱いはされたくない。微妙な乙女心を両手に込めて胸を思い切り握り締める。
「それにしても、これじゃあ私が警察官をやってる限りはひったくりがなくならないわね」
一生懸命務めを果たすより、辞めた方が犯罪が減る可能性があることにため息が出る。
「いっそ悪の親玉として余と天下を取らぬか? 余の力を受け入れられる肉体と魔王に
「いや、ならないから」
そう魔王に返事した時にある考えがふっと脳裏をよぎった。
こんなに魔王の力を借りていて、いつか魔王に身体を乗っ取られないだろうか。
当初の話では魔王が力を貸す代わりに身を
「ねえ、魔王。もしかして」
ジリリリリ
ある日突然身体を乗っ取られるくらいなら、魔王に予告されている方が対策も覚悟もできる。そう考えて確認を取ろうとした矢先、スマホの着信音が鳴り退く。
「はい。
「
「だから企業じゃないって言ってるでしょ?」
「お、おう」
こればかりは譲れない。警察は企業じゃない!
現場に近いという理由で出動してるけど、それが犯罪の増加に繋がっていると考えるとなんとも悲しい。だからと言って見過ごすわけにはいかない。胸元をキュッと締め…なくてもいいかな、なんて思い始めていた。
「フフフ、
「違うわよ! 犯人逮捕のためには必要だからこうしてるだけ。捕まえたら思い切り締め付けるから」
悪態を付きながらも魔王の力を借りないと犯人を捕まえられないのは事実。なんだかんだ今のところは良きパートナーになりつつあった。
「では参ろうか。我らの力を見せつけに!」
「なんで魔王がメインみたいになってるのよ! あと、力の誇示じゃなくて逮捕が目的だから」
もしかして世界征服じゃなくて警察官の仕事に興味が出たのかな? それなら付き合ってあげてもいいかも。そんな風に思い始める自分がいた。
「それにしても、あの子達はどうしてるのかしら。最近全然見かけなくなったけど」
「ん? どうした?」
「いえ、なんでもないわ。今はひったくり犯よ」
暴走族・
ただ、私はあの子達の目的を知っている。やり方は間違っているけど、
「とにかく目の前の犯罪を取り締まらないと」
ボタンを一つだけ外して着こなす制服ではちょっと気合を入れるだけでおっぱいが揺れる。
「
「魔王のくせに人間を気遣ってくれるの?」
「貴様が死んだところで余は転生するだけだ。だが、もっとおかしなところに転生したら大変だろう?
「はいはい。魔王様は自分勝手ですね」
ひと昔前のツンデレみたいなリアクションに思わず笑みがこぼれた。おかげで肩の力が抜けたかな。
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