第5話
ものすごい勢いで吹っ飛ばされたにも関わらずかすり傷程度しか負っていないその姿に一同は尊敬の念を覚えていた。
「よお、お兄さん。なかなか気合いが入ってるじゃねーか」
人目に付かない路地裏で
「君達はたしか魔王がビームを撃った時に近くで見ていたよね? ケガはなかったかい?」
「え⁉」
男は『近く』でと言っていたが30メートルは離れていたはず。それに他の野次馬も多かった。そんな状況で自分達を区別できるはずがない。
「元の世界ではいつ奇襲に合うかわからなかったからね。人の気配に敏感なんだ」
「
下っ端の一人が耳打ちする。
「わかってる。交渉はオレに任せて、お前らはもう帰れ」
「さすが
「
そう言って下っ端達はおとなしく去って行った。
「すごいね。彼らはキミの家来なのかな?」
「勝手に付いてきてるだけだ。オレは誰とも組む気なんてないのに」
とある事情に
「真のリーダーというには勝手に人が付いてくるのかもしれないよ」
「お前もチームにリーダーなのか?」
「いや、俺の相棒はたった一人。今は別々の世界で暮らしてるけどね」
男の表情はどこか寂しそうで、そんな風に思える仲間がいることが少し羨ましかった。
「別々の世界というのは外国ってことか?」
「いいや。信じてもらえないかもしれないけど、僕は別の世界から魔王を追ってこの世界に来たんだ」
「……は?」
「まさか魔王があんな小柄な女性に転生するなんてね。でも身のこなしは本物だし、
ビームだって撃てる。異世界まで追ってきて本当に良かったよ」
コスプレだと思っていた男の恰好は異世界から来たと言われると途端にそう思えてくるクオリティの高さだ。それに現にビームだって見ている。
「その、
下っ端を帰しておいてよかったとつくづく思う。これではまるで
「俺は死んでないからこのままの姿でこっちに来れたけど、魔王は滅びながらこっちの世界に来た。おそらくその影響で別のモノに生まれ変わってるんだろう。見た目は同じでも彼女の中に魔王が潜んでいる」
「見た目は同じでも……いや、実はちょっと、同じじゃない部分があって……」
「今日になっておっぱいが大きくなってました」
「……へ?」
何か魔王の兆候みたいなモノの情報を得られるのかと思っていたので気が抜けた返事をしてしまう。
「だから、昨日まで中学生よりも平らな胸だったのに、今日はいきなり巨乳になってたんだって!」
もしこの男の言うことが全部本当で
「なるほど。俺が彼女から感じた魔王の気配は胸ら発せられていた可能性があるのか。たしかにビームも胸から発射されていた」
「そうだよ! だから剣で斬るなら
「なかなか難しい注文だね。魔王がくっ付いているだけならともかく、おそらく彼女の身体の一部にはなっているはずから」
「それって、つまり……」
魔王の正体がわかったところで
「ただ、俺は勇者だ。無関係な人を傷付けるわけにはいかない」
「じゃあ!」
絶望の中に一筋の光を見出した表情はパァッと明るくなる。
「まずは彼女と魔王を分離する方法を探ってみる。とにかく戦ってみないことには何も進展はないだろうけど」
「もし
「ありがとう。もしかして暴走族というのはこちらの世界の自警団みたいなものなのかな?」
「ん? おお。まあそんなところだ」
「それは頼もしい。そうだ。自己紹介がまだだったね。俺の名前はムート。勇者ムートだ。よろしく頼む」
「むとー? ああ、
「ムトーじゃなくてムートなんだが……世界が違えば発音も違うが。まあいい。
ガシっと力強く握手する二人の姿はお互いの力を称え合う
(魔王の話が本当かどうかまだ怪しい。どっちにしろ、
こうして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。