ご都合主義物語
月林 浩
序章 歩み出した世界
第1話 プロローグ
学校が春休みに入った三月のある日、大学三年の俺「
それは天気の良い特に何もない穏やかな日であった。
高校2年生の妹は友達とショッピングに出かけ、公務員の父親は朝から仕事に行っていたので家には母親と俺だけだった。
家族仲は良好で、特に妹とは思春期になるべく優先して言うことを聞いていたためか別に嫌われることなく、むしろ周りから仲が良くて驚かれることが多かった。
そろそろ就活をしなければならない時期だったが、俺は真面目に大学の授業を受けていたから成績は良い方だったし、両親も反対していなかったため面接による内部推薦で大学院に行くことを決めていた。
それに将来やりたいこともなかったので考える期間を増やすという目的で進路を決めていた。
だから余裕があったし、まだバイトも入れてなかったため実家で休みを満喫していた。
朝の3時ごろまで動画を見て、11時くらいに起きだすそんな日常。
起きてからリビングでいつものようにスマホでSNSを見て検索をかけていた時、買ってなかったラノベの新刊が目に留まった。
少し遅い朝食を済ませ、最近外に出ていなかった俺は気晴らしもかねて新刊や面白そうな漫画がないか探すため本屋に行くことにした。
「ちょっと本屋行ってくる」と俺が言うと、
「いってらっしゃい」と母が俺に声をかける。
「いってきます」と俺が返す。
こんな何気ない普段の会話があった。
いつもするやり取りだった。
そして…これが俺と母親の最後の会話になってしまった。
鍵をかけて階段を降り、外のまぶしさに眼を細めながら信号のない車道を渡っているときに曲がり角から来た車にひかれ、アスファルトに撃ちつけられた。
体にかかる衝撃と頭から流れる生暖かい感触でわかった。これはもう無理だなと…
ただ昼にラノベの最新刊を買いに出かけただけなのにあっけなく俺の人生は終わった。
明るい時間帯なのに車に気づかないとかそんなことあるのかって、今考えれば不健康な生活が原因で疲労があって視野も狭くなっていたのだろう。
毎日ソーシャルゲームで小さな画面を凝視していたし、パソコンで動画を夜遅くまで見るような生活は眼だけでなく頭にもよくなかった。
それに普段はあまり車が通らないから油断もしていた。
原因を挙げればきりがないがすでにおきてしまった事実はあの時こうしていればは通用しない。
引かれたときに走馬灯を見ていた。
俺は走馬灯みてもラノベやアニメが好きだから二次元ばっかだろうなぁとか、死ぬ間際に「来世に期待」とか「いざ異世界転生」とか考えると思っていたけど違った…
(死にたくないなぁ)
走馬灯によって今までの記憶が一気に蘇る。
初めて恋をした女の子、友達とバカやっていた学校生活、妹と喧嘩したあの日、父親に初めて買ってもらったカードパック、母親の手作りケーキ…
嫌な記憶も楽しかった記憶もこぼれ落ちるように視界が暗くなるにつれて消えていく。
最後に残っている想いは今も家で俺の帰りを待っている母親や夜遅くまで働いている父親に何も恩返しできていないという後悔だけだった。
そんな記憶を思い返しながら俺は今小学6年生で中学受験をしている。なんでこうなっているかって…決まっているだろ…人生二週目じゃい!
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