デストロイIII【1000PV感謝】
スティーブンオオツカ
第1話 殺し屋サイボーグ
近未来の地球、突如大流行したウイルスによるパンデミックで大きく世界は変わった。
国と国はパンデミックの責任を押し付け合い、戦い、そのための技術を進歩させて更に戦った。
時は経ち、治療薬やワクチンは完成し、少しだけ平和になったものの、未だに世界は混乱のさ中にあった…
そして、そんな混乱の中に適応して生きている男が日本にいた。
「ターゲット接近、俺はどうしたらいい?」
廃墟のビル、そこにライフルを構えて待機する妙にゴツゴツとしたスーツに身を包んだ男がいた。
その視線の先にはラフな格好の男が三人、雑談しながら誰かを待っているようだ。
『そのまま待機してくれ、もう少ししたら取引相手も来る』
スーツの男は誰かと交信しているようで、苛立ったように相手に返す。
「皆殺し? そんな事聞いてないぞ」
『すまん、予定が変わってしまって…』
「…追加料金しっかり払えよ」
すると、そこへまた別の集団が現れる。その内の一人がケースを抱えており、まさにこれから取引相手が始まろうとしていた。
「よし、じゃあ仕事を始めるぞ」
そう言った瞬間、男はまずケースを持った男を狙撃する。弾丸がケースに命中した事や銃声が聞こえた為慌て始める男達。
すると、ケースから光が漏れ出した事に男達は気づいたが既に遅かった。
その直後、ケースは抱えていた男諸共吹き飛んだ。
もちろんその周囲にいた仲間も爆風に巻き込まれたので無事では済まない。
「よし、行くぞ!!」
スーツの男が持っていたライフルが変形し、マシンガンのようになると同時に背中が盛り上がる。ブースターのような物が背中から展開されると、次の瞬間には、火を噴いてスーツ男は宙を舞った。
「おい!! なんか来るぞ!!」
「ま、まさか俺達の取引がバレてたのか!?」
「チクショウぶっ殺せ!!」
取引現場にいた男達は慌てて銃を取り出し、迎え打とうとしたが、宙を舞うスーツ男に一発も当てられず、その場にいた男達は次々に倒れて行った。
やがて死体の山が出来上がると、スーツ男は何事も無かったように依頼主に連絡を取る。
「全員と荷物の始末は終わったぞ」
『流石だな、ザグロブ…』
ザグロブと呼ばれたスーツ男は、持っていたマシンガンを拳銃並みの大きさに変形させる。
すると今度は太腿の側面がせり出し、そこへ銃をしまった。
そう、彼はサイボーグ、機械仕掛けの殺し屋なのだ。
「結局なんの取引だったんだ、コイツらは?」
『昔の戦争で使われてた機械と
「はぁ…もういい、追加料金もきっちり払ってくれよ」
長話になりそうなのでザグロブはすぐさま通信を切り、その場を後にする。
殺した人間の事や、金の事より、彼はとにかく家で休む事を優先したのだ。
彼にとって、我が家こそが安息の地なのだ。
「あっ、今日そういえばニゲコイの再放送の日だったな…」
──それからしばらくして…
「はぁ…やっと帰って来れた、レジが遅せぇからよぉ…」
ここはザグロブの自宅アパート、かなりの年季の入ったこの建物に住んでいるのは、彼一人だけだ。
彼の住む豊郷市大和ニュータウンは、かつて多くの人々で賑わっていた。 しかし過去のゴタゴタや、田舎の過疎化の進む町に目を付けた裏の人間達の隠れ蓑となった事により、次第に限界集落ならぬ限界ニュータウンとなってまともな人間は誰も住まなくなったのである。
そして、ザグロブも隠れ蓑として使っている人物の一人でもあった。
「メンテナンスは…いらんだろ、ひとまず飯だけ食べてぇ」
彼は袋から食品チューブを取り出すと、それを吸い始める。 サイボーグだからドロドロの食料しか食べれないとか、そういう事ではなく普通に料理をするのが面倒なのでこれで済ましているのだ。
「…明日あたり仕事休んで飯で食いに行くかな…」
どうせ行くわけも無いのに予定を立てていると、彼の持っていたスマホに一通のメールが届く。 休暇を取ろうとしていたのに、と彼はがっかりしつつもメールに目を通す。
内容は、とある仕事の依頼だった。
「ヤクザの幹部…暗殺か…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます