再婚雛の子どもたち

霜月このは

プロローグ

 今日は三月三日。古い言葉では、上巳の節句というらしい。

 桃の節句とも呼ばれたこの日には、古来より女の子のためのお祝いが行われていたという。


 幼い頃に聞いてみたことがある。


「ねえ、ママ。『おひなさま』って、どうして隣に、男のひとがいるの?」

「それはね、このお人形さんのパートナーが男の人だからだよ」

「男のひとがパートナーって、ひーくん家みたいな?」

「そうだね。ママの他にパパがいるよね。それがパートナーってこと」

「うちは、ママとみーちゃんとすみか、だから、女のひと三人だよ! すみかの人形なのに、女のひとの人形が足りないね。へんなの!」

「そうだね、面白いね。それは、むかーし、むかしの人が、考えたお人形だからだよ」


 ママは笑いながら、そう話してくれたっけ。みーちゃんも、隣で笑ってた。

 その頃の日本では、まだ男女のペアにしか、結婚が許されていなかったのだと言う。


 今の私には想像もつかないけれど、それは、むかーし、むかしの話なんかではなくて。

 それは、ママ達が生まれ、そして、生き抜いた、平成と令和の時代のものがたりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る