パワハラ勇者の経験値を全て稼いでいた《ポイント・エージェンタ》は追放されてしまう~俺が居ないとレベル1になるけど本当に大丈夫?スキルが覚醒して経験値【1億倍】なのでS級魔法もスキルも取り放題~
第16話 里に歓迎されず、条件として「試練のダンジョン」攻略を命じられる
第16話 里に歓迎されず、条件として「試練のダンジョン」攻略を命じられる
「アルス様ぁ……」
どこか甘えた声をあげているアリシア。彼女は俺の腕を強く拘束するように抱きついてくる。
「う、うん……。ちょっと歩きにくいかな……」
そんなやり取りをしつつ俺達は平原地帯、森を抜け「神獣の里」に向かっていた。
因みに彼女は既に学校を卒業し、正式に俺のパーティメンバーとしてギルドに登録されている。
アリシアのポイント・エージェンタの効果は継続されているが、彼女が頼もしい理由はそこではない。大陸に二人として存在しないユニークスキル【剣聖】だ。剣の腕なら彼女の右に並ぶ人間はいないだろう。
引く手あまたにもかかわらず俺なんかのパーティに加入してくれたんだ。後悔させないようにしないとな。
小休止を重ね、目的地に向かうと、不意に二名の見張り役が目に入る。
一人は鳥の姿をしており、もう一人はトカゲ姿をしている。
恐らくここが「神獣の里」の入り口になるのだろう。
「アルス様。ようやく着きましたね!」
「そうだね! 早速、中に入れてもらえないか話をしてみよう!」
俺達は門番と話をつけようとするが、何故か彼らにギロリと睨み付けられる。
どう考えても歓迎されている雰囲気ではない。
「何だ、貴様ら!」
「あの……国王からこちらの魔王軍討伐を依頼されて来たのですが……」
「フン、既にこの里には【勇者】様が入られている。人間の助けは足りてるんだよ」
突然門番から出てきた勇者という単語に俺は顔をしかめる。
レオン……。彼がこの里にいるのか?
村の繫殖期を無視した件もある。出来ればレオンと一度会って話をするべきだ。
俺は勇者について問い詰めようとするも、何故か隣でアリシアが両手をわなわなと震わせていた。
「あの、ゴミ……もといレオンが中にいる!? アルス様ッッ! 今すぐ彼らをぶっ飛ばしてでも、中に入りましょう! この里は危険です!」
アリシアの発言に色々とツッコミどころがあるが、この状況で堂々と「ぶっ飛ばす」発言をする彼女に俺は顔を青ざめさせる。
「何だお前達! 人間の分際で我々に歯向かうつもりか!」
案の定、門番達は槍をこちらに向け、臨戦態勢に入る。
「えっと……。これって結構、不味いんじゃないのか……」
俺は一歩下がって、彼女と共に出直そうとするも、正面から凛とした声が響き渡る。
「騒がしいな」
頭部にネコのような耳をし、腰まで長い黒髪をした人物が現れた瞬間この場は緊張感に包まれる。
この人……強いな。それも物凄く。
恐らくステータスだけでいえば、【剣聖】のアリシア以上じゃないのか?
「ノ、ノノ様ッ!」
槍を構えていた門番はすぐさま武器を降ろし、彼女に道を開ける。
恐らく、里の族長なのだろう。
「お前達は何だ? どうしてここに来た?」
「この里に魔王軍が攻めてきていると知りました。俺達の力をお貸ししたいのです」
「フッ。ガキの癖に英雄気取りか。生憎、我が里には勇者殿がいる。お前達の手を借りるまでもない」
「貴方達はあのゴミ……もといレオンの悪評を知らないのです! 今すぐアルス様をこの里に入れるべきです!」
「この里は代々勇者を崇め、勇者に仕える者を送り出す役目がある。勇者を愚弄するとは看過できんな」
この里にそんな風習があったのか……。
無表情の族長は続けて冷然と吐き捨てる。
「それに、アルスと言ったな。お前のことは勇者レオンから聞いている。どうやら人間達の町で犯罪を繰り返してきたらしいな」
瞬間、アリシアはギンッと族長を睨み付けた後、俺に主張する。
「アルス様! もう、話になりません。無理矢理にでもこの里の中に入りましょう。あのゴミの行いを黙って見過ごせるわけがありません!」
「いい加減にしろ。それを私が許すと思うか?」
「どうしても中に入れてもらえませんか! 俺達の力が必ず役に立つはずなんです!」
何度もお願いする俺にとうとう折れたのか、族長は露骨に溜息をつく。
「なら、ここの西にある『試練のダンジョン』を攻略して見せろ。まあ、あそこはそもそも心が清らかでないと挑むことすらできないがな」
「ノノ様! いくら何でも、ノノ様に攻略できないあそこを人間風情が攻略できるわけが……!」
門番の発言にまた苛立ちを見せるアリシアだが、彼らの言っていることも分からなくはない。
獣人、亜人種は人間よりステータスが高く、その差は約2倍になる。
人間が平均して10の戦闘力とすると、彼らは約20の強さを持っているのだ。
かと言って、俺達はこんな所で足踏みしている場合じゃない。
レオンが里にいるのであれば、一刻も早くダンジョンをクリアして中に入れてもらう必要があるからだ。
「分かりました。『試練のダンジョン』を攻略すれば良いんですね?」
「フン。まぁ、死なない程度に頑張ってみるんだな」
俺とアリシアは里の中に入れてもらうため、族長の言った「試練のダンジョン」へと歩を進めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます