第576話 chikan

列車は、かなりの高速で進んでいるらしく

左右に結構揺れる。


小柄な友里恵は、重心が低い(?)のか

結構楽そうで、デッキに。


ボディの起伏も少ない(笑)ので


安定感。



「パティだったら、おっぱいが大きいから揺れるよね(^^)」などと

友里恵は、微笑みながら。


11号車のデッキに進もうかと。


10号車「ソロ」は、個室なのだけれども

ガラスのドアからデッキは、ふつうの客車。



ちょっと揺れるので・・・・

デッキの階段のところで。

よろける友里恵。



「おっとと」


と、階段の手摺り、ステンレスのそれ・・・使い込まれてつやが消えてる・・・


を、右手で持とうと。



階段に立っている人に気づき


「あれ?」


視線を移しているうちに、手摺りを掴み損ねて。




ドテ




と、倒れそうになったが、その人物が捕まえてくれて。



「あー助かった」



でも、浴衣なので。前がはだけて。



「きゃーーH!」



その人物はにこにこ「Hは君じゃん」



ビデオカメラを首から下げて。

同じく浴衣に、国鉄マークのスリッパ。


なぜか、ポーチを肩から下げてて。



友里恵は、さっ、と立って前を重ねて。



「・・・・・おじさん、盗撮マニアでしょ。撮った?今の」




「おじさん」は、笑って


「撮ってないよ、電源落ちてるし」




友里恵は「でも見たでしょ」と、ちょっとふくれて。



「おじさん」は「うん、かわいいおっぱいとパンツ」



友里恵は「チカンですーおまわりさーん」と叫ぶので



おじさんは「あ、これこれ」と友里恵の口を塞いだ。



友里恵は「ナニスンノ、乙女の花の唇に。あーもうお嫁にいけないわー。

おじさん責任とってよ」と(^^)。



「おじさん」は・・・「ああ、君、日生さんのお友達」




友里恵は・・なんとなく・・・「あ、大分駅で、愛紗と話してた人。誰?おじさん」





「おじさん」は「僕は山岡です。東京駅でね、あの・・・バス・ドライバーの子と遭って。


下りのこの列車。「富士」に乗って。乗り合わせて。



友里恵は「そうなんだ。旅仲間・・・・の、盗撮マニアか」と、ちょっとふざけて。



山岡は、ハハハと笑い「ビデオはね、僕は・・・旅の雑誌を書いてるから。」



友里恵は「アタシもそーなんだよー。ビデオレポーター。」



山岡、にんまりして「アレでしょ、なんとか生ビデオ」




友里恵は「生だって、いやらしーいいい。やっぱチカンだ。おまわりさーん!」と

叫ぶマネ。



山岡は笑って「うん、お笑いレポーターでしょ」




友里恵「どうしてわかるの?」と、右の髪をなでて。




山岡はビデオカメラを右手で抑えて「なんとなく。じゃ、相方さんも一緒だ」



列車は高速で、揺れながら進んでいて。山岡はデッキの壁に背をあてて。

足で床に踏ん張っている。


友里恵は軽いので、そのまま立ってて。でも、ステンレスの手摺りを持ってて。

「相方?ああ、由香は寝てるんじゃない?旅で疲れたし・・・そうそう、列車を探検してたん


だ。おじさん、ヒマなら一緒にいこ?」


山岡は「僕は山岡鉄男。46歳」


友里恵は「へー。じゃ、鉄ちゃんだ。そのまんまじゃん、鉄道好き。あ、タマちゃんと

同じくらいの年だね」



「タマちゃん?ああ、あの・・・日生さんのドライバー仲間」


と、山岡。




友里恵は「そんなこと話したんだ。愛紗。まあ、旅のマスはかき捨て」



山岡は「マスだっけ」



友里恵は「違ったかな、まあいいや。旅先で知らない人に話すって

あるかもね。」


とか、11号車のデッキドアを開けて。

片板ガラスにステンレスの網が入ってて。いかにも昭和ふうの引き戸。

それを、よっこいしょ、と友里恵は開けて。



普通のB寝台、11号車へ。




山岡は、あとについて「うん、なんか、旅に出ると・・・いいものね。悩みがあったり

しても、すっきりできて」




友里恵は、11号車の洗面台のところから、客室ドアを開けて。


今度は開き戸、スモーク硝子でアルミの取っ手・・・いかにも昭和の

喫茶店みたいな。


反対側は押すところに「おす」と平仮名で書いてある。

なんとなく可愛らしい。




友里恵はそこで振り向いて「愛紗、悩んでた感じ?」と、山岡に尋ねるので



山岡は「うん、列車が偶々雨で止まってて。用宗駅だったか。

いろいろ聞いたけど。


「無理しなくていいんじゃないかな」


って、答えたな僕は。





友里恵は振り向いて立ち止まり「そうなんだよね、愛紗って頑張る子だから。

誰かが止めてあげないと、ぶっ飛んじゃいそうで。

アレはアレでメンドウな子だよなーホント」と、笑って。



山岡も笑って「で、君みたいないい子がついててあげるって訳だ」




友里恵もにっこり「いい子?」



山岡はちょっといたずら「おっぱいのかたちの」




友里恵もふざけて「やっぱ見てたなー、チカンですーおまわりさーん」と

叫ぶマネ。




山岡は「見せたの君じゃん」と、笑う。



友里恵は「キミじゃタマゴみたいじゃん。シロミはいないよん、あたし友里恵」



山岡はナットクした感じで「うん、いい子だよやっぱ」


友里恵が「おっぱいが?」




ふたりは歩きながら11号車を渡り終えて、デッキに。



山岡は「おっぱいは触ってないけど」



友里恵は「触んなきゃわかんないのかい」





「ま、いちおう」と、山岡はデッキドアを開けて。

12号車に向かおうと。「パンツも可愛かったなぁ」




友里恵は「見るな!」




「見せたの君じゃん」と山岡。



友里恵は「キミじゃないって・・・これじゃさっきと同じだぞー。

そんなハナシ愛紗としたの?」



山岡は「あの子はねえ、こういう話したら恥かしがっちゃう感じだし」



友里恵、頷く「うんうん。お嬢さんだからねー。バスガイドなんて出来る柄じゃないし」



とか、歩きながら12号車へ向かう。

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