第577話 otk48

「なんでガイドになったかは本人から聞いたけど」と、山岡が言うと


友里恵は振り返り、ケイレイ「ホンニンは平巡査でありまーす」

わーたしーがーさーさーげたーぁ、みーさーおーxxxとぉ♪



と、歌うので、山岡は笑って「ダメダメ、寝てる人も居るんだから」


11号車の廊下の引き出し椅子に座ってたおじいちゃん、


痩せてて、日焼け、ラクダのももしき、ダボシャツに浴衣。


「おじょーちゃん、面白いねぇ」と、にっこり。アタマは少しハゲてて。



友里恵もにっこり「おじさん、ありがとー」(^^)。アクシュ。



山岡は通り過ぎながら会釈。おじいちゃんも「保護者さんですか?」



山岡はにっこり、いえいえ・・・と手を降りながら(^^)/~~



「友里恵ちゃんはガイド向いてるよね。ホント」




友里恵は「まあ、相模だしね。海っぺたの娘ってこんなもんだよ。」


山岡はにこにこ「かわいいねぇホント」



11号車から、12号車に向かいながら。


天井の低いB寝台車は、なんとなく、背の高い人には窮屈感があるけど

彼は175cmなので、それほどでもない。


「アイシャって名前は、音楽趣味だよね」



友里恵は歩きながら、時々振り返り「うん、それなんだよー。タマちゃんの

バスにね、待ち伏せして乗り込んで。


12時15分の市民病院行き。日曜でオフなのに、わざわざ駅まで行って。



それで。バスで寝てたタマちゃんを起こして「病院行きはこのバスですか?」



1番線に止まってるんだから他にないだろうと思うけど。」




山岡はにこにこ「うんうん、それで?」




友里恵も楽しそうに「タマちゃんもまるでその気が無いのか・・・愛紗だって

気が付かなかったのか


「そうです」


って言って、そのまま寝ちゃったんだって」



ハハハ、と山岡は笑う「そんなもんだよ寝てる人って」




11号車の廊下が終わって、また、開き戸が。

スモークの硝子とステンレスの扉。


取っ手はなぜかアルミの鋳物で。昭和の喫茶店のような「ひく」と平仮名で書いてあって。


手摺りがもう磨り減って、ぴかぴか。


それを友里恵は、よいしょ、って引きながら「でも、そう思い返すと

愛紗も結構・・・悪魔ちゃんだよね」




山岡は「ああ、そんな戸籍の子が居たなぁ、訴訟になったじゃん親と国と」



友里恵も楽しそう「そっちじゃなくて」



山岡は「わかってるって」




友里恵は「鉄っちゃーん、マンザイ師でしょ」



山岡は微笑んで「いえいえ」



友里恵は「だーってサ、交番表しらべて。タマちゃんのバスに駅で乗り込んで


告ろうとしたんでしょ?」


山岡は「でも、タマちゃんが寝ちゃったんで、オジャン」



友里恵は「ハハハ。ギャグだよねー。マンガだったらさ、後姿の愛紗のアタマに

汗が ^^;


風が吹いてたり。 シラケ鳥が飛んでたり。




山岡は笑って「マンガっぽいけど、面白い。ホンニンはそう思ってたかもね。



んで、バスに乗って、一番前の席に座ってたら・・・「かわいい愛紗」のハナシ

したんでしょ?


それはねー。少しは気があったんじゃない?タマちゃんに。」




友里恵は「そーかなぁ」と、ちょっと思案顔。


そういう顔すると仔犬みたい。




山岡は「いやいや、友里恵ちゃんだってカワイイよ」




友里恵はちょっと恥かしげに てっちゃんアリガト。と。



山岡はにこにこ。




友里恵は「そんなコトまで話したんだ」



山岡は「だから、あるんだって。旅先で。知らない人に話しちゃうって。

街角だったら、占いのおばさんとか。△帽子で目だけでてて。」




友里恵は笑って「イマドキそんなの居たら怖いよー」


と、11号車のデッキに出て。




洗面所も、リニューアルされてピンクの洗面ボウルに、自動水栓、三面鏡。




ちょっと横顔を自分で見て、ニタっ。




山岡も笑って「そうだね。マンガみたいだね。笑うセールスマンとか」




友里恵は「そうそう!マンガ好き!ドラエモンとか」



揺れてるデッキから12号車へは幌の通路で

レールを渡る音が響いて。


ごーーーーーがたん、がたん。



遠くの車両の音も聞こえてくる。




友里恵は「なんの話だっけ?」



山岡は「どうでもいいけど、かわいいアイシャって唄のハナシ。

まあ・・・かわいいコだったらその位言うよね。ふつう」




友里恵「そーかなぁ・・下心無くても?」




山岡「うん。カワイイコに喜んで欲しいと思うもの。誰だって。

可愛い子の方も、それに慣れてるでしょ、ふつう。

だから、駅でさ、その・・・タマちゃんに

バスの扉を開けてもらえると思ったのね、愛紗ちゃん」



友里恵は楽しそうに「まあ、あのタマちゃんはアタシのもんだしー」



12号車は、また、片板ガラスの扉が待っている。


重たいので、こんどは山岡が開けて上げて。

友里恵が前に居るので、左手でほい、と。


友里恵は、山岡の脇から見上げて「ありがとてっちゃん。加齢臭ないね」



山岡は自分の脇を嗅いで「そうか?友里恵ちゃんの匂いは・・」と



友里恵は前に飛んで「Hなおじさんだー」とにこにこ。


で「ふつーそうだよね」と。ちょっとマジメな顔になって。



「どしたの?」と、山岡。12号車はB寝台車だけど

昔ながらの。洗面台は白い陶器で、水の栓は手動。

トイレは反対側。ふつうの和式。



ステンレスとアルミで、なーんとなく・・・留置場みたい(入った事は無いけど)。



友里恵は「うん、タマちゃんはそうじゃないから。そういうHなとこがなくて

Hっていうか・・・なんていうか。人間じゃないみたい」


と、足を止めて。



歩みを止めると・・床下で車輪が凄い音を立ててレールの上を滑っているのが

わかる。



しゃー・・・・・と、金属音。



かたこん・・かたこん・・・・。



速度が高いので、たたっ、たたっ・・・みたいな感じ。





山岡は「Hじゃないってことかな・・・まあ、友里恵ちゃんと・・・僕くらいの年の男だと


「可愛い」って言ってもね。そのまんま・・・・交尾の対象って訳でもないんじゃない?

僕だって、そんなことまで思ってないよ」


と、微笑んで。



友里恵は、前に向き直って歩きながら「そーかなぁ・・・アタシもね。その

タマちゃんと出会ったころ・・・・17だったんだけど。16かな?


明け方のコンビニで、一緒のバイトしてて。

薄暗がりのキッチンで。誰も居ないのに。

アタシも、そばに来てほしいのに

なんにもしないの。


それで、アタシが「熱っぽい」ってウソ言って

オデコに手を当てて。


そしたら、タマちゃんは「どれ?」って、アタシの掌の上から

おでこに手あてて。



冬だったから、冷たくて気持ちよかった。



そのまんま、飛び込んだんだけどね。」





山岡は「なにもしなかったんでしょ?」





友里恵は、うなづく。


山岡は「そうだよ、ふつうの男は、40歳過ぎでしょう。

分別ってものがあるし・・・・だって、そこで友里恵ちゃんに襲い掛かったらさ・・・

オトナの男だったら「抜いたり挿したり」


と言って、にかっ、と笑う。




友里恵はちょっと引いて「いやらしー、やっぱチカンだぁ、おまわりさーん」

と、ふざける。



でも、そうかなぁと友里恵も思う。そのまんまキッチンでズボン下ろされて

後ろから・・・なんてぇ。ハジメテなのにそんなのって。




山岡は、黙ってしまった友里恵に「何考えてるの?」



友里恵は「うん。てっちゃんと同じコト」



山岡は「うそー、そんなぁ、フシダラなコト」



友里恵は「え、アレ?アハハ。考えてるコト伝わるのかなぁ」



「まあ、そういうコトになっちゃったら困るでしょ?友里恵ちゃんの将来もさ。

だいたい40男って、そういうもんだし。若い娘となんかしよう・・なんてのは

あんまり居ないよ。ふつう」と、山岡。



そっか、と、友里恵もにっこり「でも、それで愛紗も自信無くしたのかな」



山岡は「まあ、少しはあるだろうけど。ひとり暮らしって妄想するからねー。

僕だって母とふたりだけど、自分の部屋に行くと」



「しこしこしてんでしょ」と、友里恵。



山岡は、ハハハ、と笑い「そう、あからさまに言わなくてもね、そうだよ。生き物だもん」



12号車はあんまり人が乗っていない。

カーテンの開いている寝台がほとんど。


そればかりか、リネンも置かれていなかったり。


静かなその空間、人が乗っていない車両は空気まで綺麗だ。



「ホントに可愛い子だったら、大切にしてあげたいと思うし。40男ってそうだよ。」と、山岡。



友里恵は「じゃ、30男だったら?」

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