第532話 北別府

ゆっくり走り出した「富士」ブルー・トレインは

おとなりの駅を過ぎて。



友里恵は「東大分、南大分、西大分。北別府」


由香「北別府はピッチャーだろ」


友里恵「そうだっけ」


パティ「たしか、ハイ」


理沙「パティはベースボールプレイヤー」


パティ「ハイ」と、にこにこ。



菜由「野球選手と微妙に違うの」



愛紗「なんとなくわかる」



と、めいめいに・・・・白身のお魚で、大分麦焼酎。


なんか、あんまり・・・・可愛くないかも、と愛紗が思ってると




食堂車の方から、山岡がカメラを下げて。「やあ」



愛紗は、ちょっと恥かしくなって「あ、はい、この列車だったの」



山岡はおばあちゃんをエスコートして・・・「それでは、ごゆっくり」




とことこ・・・と、10号車の方へ。




可愛くないと、なんて思うのは・・・若いうちなのかな(^^;


なんて。愛紗はお酒を普段飲まないのも、そんな・・・・心遣いと言うか

対面と言うか・・なんて思ってたりして。




車内放送が、カンタンに --まもなく、別府に着きますーー


とだけ。


別府で降りる人はまあ、居ないので

それでいいのだろう。



菜由は「母と子・・か。割とあるね」と、山岡を見て。



愛紗「そう?」




菜由「タマちゃんだってそのパターン」



愛紗「ああ、そうか」と。



列車が別府駅に差し掛かる。



別府、旧来の温泉場だけど駅は高架で、近代的だ。

高架、と言っても築堤の上を進んでいるので・・・・高架にするのが普通。

ホームには、古い感じの洗面台があったりするので

蒸気機関車の頃から、高架だったのだろう。



友里恵は「湯気がみえるねー」と、山の方を見て。



白い湯煙がいっぱい。



パティは「温泉の量は日本一だそうです」と、CAっぽく。



由香「すごいね」


パティ「世界でも3番目・・・だとか」



理沙「そうなんだ。緑のお湯とかあるね」



友里恵「なんだっけ、地獄温泉」



由香「そうそう、血の池地獄」


友里恵「無間地獄、借金地獄」



菜由「なんか違う気もするなぁ」



友里恵「修行するぞ修行するぞ」



パティ「なんか、遠い昔の」



と、思っていると別府駅のホームを駆けていく

制服のJK,ひとり。




理沙は「ああ、無札」



パティ「ハハハ」




由香「無札って?」




理沙「うん。定期券だと特急は乗れないから、でも乗っちゃって。

でも、ここの駅だとバレちゃうね。捕まえもしないけど。ICカードだと

わからないし」




愛紗「そういえば・・・・・南宮崎ー宮崎間は定期で乗れるって

聞いたけど」



菜由「あ、そうなんだ」



愛紗は「うん、それで高校生が一杯乗るんだって」




友里恵「そーいえばさぁ、中村さんが定期が切れてる高校生を

追っかけてってとっ捕まえたとか言ってたなぁ」



由香「ハハハ、あのオジサンヒマだなぁ」



理沙「中村さんって?」



愛紗「バスの運転手さんで。路線に乗ってる。もと、高校教師」



理沙はなーるほど、と言う表情「教師っぽい」



短い停車時間が終わり、ドアがばたりと閉まって。


また、特急「富士」は、ゆっくり走り出す。




友里恵は「別府からもあんまり乗らなかったね」




由香「土曜だし。これから東京行く人は・・あんまり居ないのかな」


友里恵「ヒコーキで行けるしね。仕事なら」


列車は、少しづつスピードを上げて。

海岸沿いの真っ直ぐな線路、高台から海を見下ろして。


パティは「別府にも砂湯があるんです」



友里恵「指宿で入ったねー」と、思いだす。



由香「砂掛けばばあとか言って」



友里恵「そんなこと言ったっけ?」




由香「いや、本人に言ったワケではないが、でも聞こえた」



友里恵「まあ、旅のマスはかき捨て」



由香「なんか違うぞそれ」



パティ「ハイ?」



由香「あ、いやいや、箱根の方言」



パティ「ハイ。」(^^)。



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