第525話 10号車

10号車のデッキは、クリーム色の壁紙が貼られていて

明るい。


デッキ・ドアーも自動で、ガラスの大きな引き戸が

自動で開く。


スモークのガラスに、金色の☆。

S O L O

COMPARTMENT CAR


下の端に、金色のストライプ。



友里恵は「昼間見ると、華やかだね」


由香も「夜だったからね、来る時」



菜由は「ふつうの寝台車と違うんだね。値段同じなのに」




愛紗は「うん。割と人気あるね」



東京へ旅するのか、乗客が乗り込んでくると結構狭い廊下だったり

デッキだったり。


めいめいに、楽しそうだ。



菜由は「修学旅行みたいだ」と。


愛紗は「うん」と、思いだしたり。



それぞれに、指定券を見て・・・部屋の番号を。



由香「となり行くなよ」



友里恵「いちおー、数字は読める」



ハハハ、と笑いながら。


愛紗は10号。2階である。

来る時もそうだったけど、2階席がなんとなく、多い。



1階の方が広いのだけど、屋根に窓がついているのが

なんとなく、ステキに思えて。



雨粒が流れていったり・・・星が見えたり。


いつもと違った夜。


そういう感じがして、好きだった。



荷物を収納スペースに置いて、鍵を持って。


鍵はふつうのシリンダー錠で、ステンレスの鎖に

アクリルのレリーフ・キーホルダー。


☆SOLO COMPARTMENT CAR


と、ある。




ステキね、と愛紗はにっこり。




高級なホテルのよう、と・・・・そんなとこは知らないのだけど。




「本社研修のホテルも、結構・・・高級だったのかな」


遊園地の隣で、修学旅行生が使ったりするそのホテルは

ワンルーム形式で。


1階にビュフェがあったり。洋風の温泉があったり。

ロビーが広くて、夜になると遠くの山が見えて綺麗だったり。

高原だから、空気が澄んでいて。綺麗だった。



なんて、ふと思い出して。

バスの運転のことを思い出したりしても、もう・・・・なんとも思わなかった。



自分に出来ないコトがあったって、いいんだよね。



そういう気持を、友里恵ちゃんが教えてくれたんだ。


その旅が、今日で終わり・・・・・なんて思うとちょっと淋しいんだけど(^^)。


「まあ、また行けばいいね」



この後、もしかすると・・・・青森まで行くことになるし。



こんどはスケジュールの予定もないから、のんびり回って来れそうだし。



「ひとり旅になるのかなぁ」なんて・・・想像は広がる。

針葉樹の林と、青い池。


なだらかな山。


広い牧草地を歩いて・・・のんびり。



なんて(^^)。






友里恵は2階に荷物を置いて、となりの由香の寝台、1階へ。


「にゃんぱすー」(^^)/。



由香は「それは割と最近だなぁ」




友里恵は、にゃはは、と笑ってベッドに腰掛けて。「下の方が広いね」


由香「代わる?」


友里恵は「いいよ、広いと誰か来て、寝たいときに寝られないし」



由香「団地住まいっぽい発想」



友里恵「由香も団地だから」



ハハハ、とふたり笑って。



壁に掛かっているパステル調の絵を、友里恵は引っ張って。



由香「なにしてるんだ?」




友里恵「うん。裏側にお札が張ってあるんだって」



由香「お札?」



友里恵「こわーいコトがあった部屋とか」




由香「まさか」




友里恵「本当にあった怖い話、ってマンガに」




由香「そんなの読むな!」と、ひっぱたく。




友里恵「いたーいなにすんの」



由香「それは古すぎ」




菜由は、静かに1階のベッドに腰掛けて。カーテンを開いてみると

4番線ホームが見えて。



10号車はホームの端のほうだから、あんまり人は見えない。



土曜だから、通勤・通学ってコトもないし

時間も5時前だし。



6番線の向こうに、赤い客車が見えたりして・・・・「ああ、乗ったっけ」と思いだして。


楽しい旅だったな。



と、ちょっと旅愁。



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