第514話 813

同じ頃・・・・坂倉真由美は

A勤務を終えて、超過勤務もなく。

熊本車掌区を後にして。


「お疲れ様でした」と、きちんと、車掌区でご挨拶。



区長さんもにっこり「ああ、おつかれさん」。




色白、髪はさっぱりと大正ガールのよう。

背高、すらり。黒いスーツが良く似合う。


赤いラインにつばめの意匠。


「ああ、終わった」(^^)


A勤務は朝早いけど、終わってから・・・少し、楽しめるので

それも好き。



そんな風に真由美は思う。


日光さんと同じ真由美なので、友達は「さかまゆ」「まゆまゆ」と

呼び分ける。



同い年、一緒に採用試験を受けて。同じ車掌補。


まゆまゆは人吉車掌区なので、たまーに会うくらい。




ロッカー・ルームで着替えて。代えの制服と取り替えて

今日来たのはクリーニングに出して。


ロッカー・ルームの入り口にランドリーバッグがあって

なんだか、ゴミ箱みたいで(^^)ちょっと、微笑んでしまう。



ロッカーには、板倉裕子が居て「おつかれさまでした」(^^)。



裕子は、さっぱりショートヘア、やや赤毛、スリム、スポーティー。

学生の頃はバスケ部だったとのコト。

すこし日焼け。


一足お先に車掌である。制服は変わらないけれど、普通列車にも乗るし

CA業務は無かったりする。


真由美も「おつかれさま・・・・まだ、これから乗務ですか?」




裕子は「そう。これからちょっと。今、合間で」



乗務の合間に時間が開く事もあって。そういう時に、ちょっと休みたいと思っても

休む場所はあんまりなかったりする。



制服のままで職員食堂に居るのもヘンだし、着替える程でもない。

そういう時、ロッカールームって気軽でいい。


九州じゃないけど、それで欠乗、と言って

乗務するべき列車に乗り遅れた女子車掌もいたりする。


中間点呼、と言って

乗務の合間に車掌区で行う確認・・・をするほどでもない

ほんの少しなら、割と有り得る。



ひとり、になりがちな女子車掌。

男子の多い列車乗務員、であったりする。



裕子は「車掌試験、行く?」



真由美は「まだわかりません。新幹線に回りそうだし」




裕子はにこっ、と笑って「かわいいものね。」




真由美は「いえ、そんな」ちょっと、恥かしい。



裕子は時計を見て「あ、じゃ行くね。あたし」と

颯爽と立ち上がり、会釈して出て行った。




赤い腕章は



   車掌

CONDUCTOR



である。




見送った真由美は「かっこいいなぁ」と。



(^^)。


でもまあ、のんびりとしている真由美には

ちょっと、普通車掌は・・・辛いかなぁ、なんて自覚している。


もともと、国鉄に入ったのだって・・・・。



「あ」


図書館に行ってみよう。


久しぶりに。



本が好きで、司書になろうかな?なんて思っていた。

今でも、その方が向いてるかな、とか・・・。



私服に着替えて。なんか、さっぱり。



薄い水色の糸瓜襟ブラウスに、紺の長いスカートはプリーツ。

なんとなく・・・図書館に似合いそうな格好をいつもしている(^^)。



制帽で凹んだ髪を気にして、ちょっと持ち上げて。



ロッカー・ルームを出て。



クリーム色のカーテンをくぐって。

アミアミの手提げバッグを持って。



このアミアミは、自作。お気に入り。



このスタイルだと、国鉄職員には見えない(^^)。



熊本駅の事務室から、そのまま0番ホームへ出て

豊肥本線の赤い電車の最後尾のトコへ歩いていく。



恵が、車掌室でにっこり笑っている「おかえりー」

男子と同じ制帽なので、どこか凛々しく見える。


真由美は「おつかれさまです」と、にっこり。



乗務員室のドアを開けて、恵は降りてきて「どこ行くの?」



真由美は「図書館寄って帰りマース」と、ちょっとおどけて。



恵は、目を細め「本好きね、さかまゆちゃん」(^^)。



真由美は「はい。バイトしてたし」(^^)。



夕方の電車は結構、混んでいるけど

豊肥本線はローカルだし単線だから、割とダイヤはゆっくり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る