第513話 大分駅
そして、ディーゼルカーは大分機関区のスレートの建物を掠めるように
6番線に到着。
コンクリートのままのホームは、この後・・・この駅が高架に建て替えられる計画が
あるので
それまでの風情。
蒸気時代そのままの雰囲気も、それまでのお楽しみ。
友里恵は「あー、着いちゃった」と、後ろの窓を振り返って
ディーゼルカーの前のドアから降りる。
エンジンの熱気が、床下から伝わる。
がらがらがら・・・・と言う音も。
都会では感じられらないローカルムード。
屋根の上から排気の煙がふわふわ。
理沙「じゃ、どうする?買出し行くの?」
友里恵は「うん。トキハデパートにでも・・・駅市場でもいいかな」
由香「お買い物好きだもんね、友里恵」
友里恵は頷く。「食べ物はなーんて言ってもね。城下鰈とか
関鯖、関鯵とか、スーパーで買うと安いんだって。」
菜由は「主婦っぽい」と笑顔。
友里恵は「いつか主婦」と、笑って。
背負ってたリュックを、かぼすのカタチのベンチに乗せて
座って
「由布院のダイエーでもね、関鯖なんて500円くらいだった」
愛紗「安いぶん一杯食べられるね。」と、バッグを肩から掛けて。
背丈があるので、バッグを掛けるとより、背高に見える。
理沙は、側線にある列車や機関車をふと、見ている。
青い客車。レンガ色の機関車。
赤い電気機関車。白い電車。
いつも乗っているDE10 1205も、その中にある。
誰かが乗っていて、今は停止しているだけなのか
今日は使われていないのか・・・。
ちょっと気になる理沙だったり。
愛紗は、その理沙の視線に「あの機関車」と言うと
理沙は、すこし、はにかんだように笑って「うん、ちょっとね」
愛紗も、そういえば・・・バス・ドライバーが
自分の担当車両を誰かが乗っていると気になるとか、そんな話を
聞いた事があった。
4勤1休なので、その休みの日に・・・である。
深町が最後に担当していた7953号を、その休みの日に
恵美が借り、事故を起こして中間ドアの後ろを凹ませて・・・・
でも深町は「会社のものだから」と、気にもしていなかったとか。
その深町は、担当車がない時、ベテラン・ドライバーのバスを借り
軽い事故を起こし・・・・
そのベテランは、物凄い剣幕で怒鳴っていたとか・・・
でも、深町は静かに謝るだけだった、とか・・・。
思い入れ、そうかもしれない。
理沙は「でも、1205号はわたしが買ったんじゃないし」(^^)と
深町と似たようなことを言うので、愛紗は楽しくなった。
「そうですよね」
友里恵は、地下道への階段から振り返り「お買い物行くけど・・・一緒する?」と
愛紗に。
愛紗「うん」と言って「じゃ、行きます」
理沙は「そうね、あたしはちょっと機関車見てくるから。3時半頃に帰ってきて。
お風呂入って、4時半頃2番線に「富士」来るから」
パティは「わたしは一緒に行ってきます」
と、理沙だけは機関区の方へ。
あとは、地下道へと向かった。
地下道は、少し湿っぽい。
その辺りは蒸気時代と変わっていない。
壁は綺麗なクリーム色のプラスターに塗られていて、ホーム表示も
大きな赤い文字で 6
とか、可愛らしく書かれていて。
愛紗は「駅と一緒になくなっちゃうのは勿体無い」と。
友里恵は「壊しちゃうの?」
パティは「ハイ。高架するとき、一緒に」
由香は「なんか、淋しいね。壊しちゃうって」
駅の東側の踏み切りが、よく入れ替えで閉まるので・・・
高架にする、ついでに駅も建て替えると言う・・・そんな噂は
愛紗も聞いた事があった。
この、思い出の駅も、その時には無くなる。
ちょっと淋しいな。
愛紗はそんな風に思って地下道から1番線ホームへ昇った。
左カーブしているホーム。
良く、寝台特急が遅れるとここのホームに着いた、なんて・・・思いだしたり。
ホームに沿って出札、駅事務室、うどんスタンド。梅の家さん。
しゃきっとしたおばさん、パット・ペネターみたいな(^^)。
この風景も見納めになる。
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