第512話 古国府

だんだん、乗客が増えてきて

私鉄っぽい雰囲気になってきて。


都会だなぁ、と思う愛紗である。


でも、山が見えて田園もあって。



やっぱり長閑な久大本線。


♪ぴんぽーん♪



チャイムが鳴って、南大分、と・・・・



友里恵は「南なんだ?」



由香「北だと思うけど・・・南なんだね」



友里恵「キター」



由香「静かにしろって、お客さん乗ってるんだから」



友里恵「メンゴ」



パティもにこにこ「このあたりは、大湯鉄道、と言う私鉄だったそうです。」



菜由は「だから、なんとなく・・・・かわいいのかな。」



理沙「そうですね。軌道敷が狭いのでちょっと、運転台から見ると

ぶつかりそうな気がするけど」



愛紗は「機関車から見ると、小さく見えますね、地面」




理沙は頷き「そう。バスも同じでしょ」



愛紗は「はい。最初は怖くて、肩を竦めてました。」




と、最初の乗務訓練の頃を思いだした。


営業所から、坂を登ってアスレチック・グラウンドに行って。

免許センターに下りて。


江戸時代のような街並みの旧街道を走って。


住宅地は狭く、どこかが当たりそうな気がしていた。



鉄道なら、囲いがあるから怖くないよ、と


理沙が言ってくれたので、機関車に乗ってみようかな、なんて思った

愛紗(^^)だった。





レールのとなりに、コンクリートを盛り上げたようなホームがある

私鉄、そのものの駅だったり。


駅のすぐそばにマンションがあったり。




友里恵は「私鉄、でも電車じゃないんだ」



由香「そうだね。結構混んできた」



4人掛けのボックスに座っているので、混んで来たと言っても

あまり気にはならないけど。



大学でもあるのか、若い人が増えてきて

土曜日らしい午後の風景。



♪ぴんぽーん♪



ーつぎは、古国府ですー


と、優しいお姉さん声でのアナウンスに和む愛紗である。



日南線と同じ声、と言うこともあるけれど。




立っているお客さんが、ゆらゆら、揺れながらでも

吊革にもつかまらずに、楽しそうに話してたり

スマホを見てたり。



愛紗は、車内事故、なんて連想するけど

鉄道だとそんなに気にしなくてもいい。


路線バスみたいに、急に、飛び出し事故、なんて事もまずない。


路線バスでも、ひとによっては長閑に走っていたりしたけれど。

ベテラン・ドライバーなどは、ブレーキを全く踏まずに走り

狭い路地などは遅れてもいいような徐行で走り

広い道で飛ばす。


大型のバスを自転車のように操っていたな、と思いだす。






古国府から乗る人はあまりなく、なぜか降りる人が多かった。

大学が郊外にあるのだろう。



古国府を発車するとすぐ


♪ぴんぽーん♪


ーつぎは、終点、大分ですーー



と、シンプルに言うお姉さん声。



遊びにいくのだろう、楽しげな若い人たちは

気にするでもなく。



友里恵「降りるよ」



由香「まあ、乗っててもいいけどな」




理沙「買出しかな」




菜由「ああ、晩御飯と明日の朝。それと・・・・お風呂、どうする?」




友里恵「入りたいなぁ」



理沙「じゃ、駅のに入れてあげる」




友里恵「ほんと?うれしい。」




理沙「一応温泉だ」


パティ「ハイ。わたしも時々・・・・」




愛紗「だいじょぶですか?」




理沙「ハイ。由布院も足湯があったけど、あれも駅のものを引いたんだし。

機関区のは汚いけど」





友里恵「混浴?」




理沙「まさか」




由香「ハハハ。」





パティ「駅のは綺麗、広いですよ」




友里恵「じゃ、お買い物して。列車に乗る前にお風呂入って。」




パティ「別府にいけば砂湯とかあります」




愛紗「時間が間に合わないかな」



理沙「別府から乗れば」




愛紗「それもいいけど・・・・始発から乗りたいし」



理沙はにっこり「旅って、そうね」



雰囲気があるから。乗る前から

入ってくる列車を待ったりして。


気分も旅のうち。

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