第471話 last nite

ただ、友里恵の中にあまり


反逆


の気持はなかったけど・・・周りがそうしてたから、みたいな

ところはあった。



だから、由香もそのころは、騒々しいJKだった。


友里恵自身は、早く、家庭を持って落ち着きたいと感じていたりする。



恋人と遊ぶよりも、家庭の人。


そういうイメージ。



浴衣を着て、羽織して。


由香「パンツ変えた?」



友里恵「うん。」


由香「洗ってく?」



友里恵「いいよ、部屋で洗えば。朝までに乾くだろ」



由香「ああ、それで面白い話があって」


友里恵「なになに?」



由香は、身振りを交えて「ローカル線の旅してる人がさ、パンツ洗って

乾かなくて。

夏で。


田舎道歩いてて、タオル被って歩いてたら、乾いたから


「パンツ乾くかな」と、かぶってたら

犬に吠えられて。追いかけてきたんだって」




友里恵「ハハハ。それ、タマちゃん」




由香「あ、知ってた?」



友里恵「うん。それ・・・確かさ、弘前のハナシだって言うから・・・

愛紗が行くトコじゃないの、その道」



由香「愛紗もパンツかぶるのか」


友里恵「それはないけど」と、笑って


「前の晩、銭湯で洗って持ってきて。

寝台列車に乗ったけど、乾かなかったんだとか」



由香「そーいう話を、ライブ配信すると面白いかな」




友里恵「被るのはダメかも」




由香「ハハハ。削除される」


友里恵「ライブならないじゃん」



由香「なーるほど」


と、楽しげに笑いながら、由布院、最後の夜は更けていく。



どこに行っても、あんまりかわらない、ふたり。





愛紗と菜由は、お部屋に戻って。


菜由は、TVを点けなかった。


なんとなく・・・旅の雰囲気が壊れてしまいそうな気がして。


厚い、緑のカーテンの向こうには由布院の静かな夜が・・・更けている。

さらさら・・・と、白滝川の流れる瀬音まで聞こえてくる、川上町。



菜由は、この旅が終わると、また、ふつうの毎日が待っている。

どんな気持が待っているのか・・・想像も出来ないけど。



「また、いつか旅したいな」と、菜由。


窓辺のスツールに座って。ガラスのテーブルの上にある急須からの

お茶を注いだ。



愛紗は「そうね。今度はいつになるんだろう・・・」と言いながら

自分が、もし弘前に行ったら

おそらく・・・もう、4人で旅、なんてないだろう。そんな気持になって

すこし淋しくなった。


そう思うと「このまま、バス会社に居た方がいいのかな」なんてつぶやくので


菜由は「なに?なんのこと?」ワケわからない(笑)。





愛紗は「ううん、なんでもないの。ただ・・・今のままで居たかったら

弘前に行かない方がいいかな、なんて・・・気持になったダケ。ごめんね」



菜由は「うん、それは誰にでもあるよ。あたしは気にしてない。

だいたい、あたしはもう主婦だから、愛紗がどこに居ても・・・一緒じゃないもの」




愛紗は「そっか。じゃ、友里恵ちゃんと由香ちゃんと違う職場になるだけだね」




とか、とりとめもなく・・・・思いながら「弘前行くんなら、切符は何にするかな?」

なんて(笑)。



ツアコンっぽく思ったり、した。



東北ワイド周遊券、がいいかなー(^^)とか。


でも7日もいないし・・・・・。



青森・十和田ミニ周遊券、でもいいかなー?とか。




あ、でも・・・周遊区間が広いぶん、往復が安くなるし・・・なんて。

あれこれ、楽しく考えて。



菜由は「楽しそうね」と。



愛紗は「うん。弘前ゆきの切符、なにがいいかなって。」


菜由はにっこり「愛紗って、駅員さんでも良さそうね。旅行センターとか」




愛紗自身は、そう思ったことはないけど・・・・「そうなのかな?」なんて思いながら


あまり旅愁に浸らずに、愛紗の由布院・ラストナイトは更けていった。

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