第466話 DF200-901

友里恵は「楽しい旅だったね」と、しみじみ。

エレベータは静かに下りる。

1階。


すっ、と開いたエレベータホールの前はプールバー。



由香は「まだ終わってないよ。明日も大分行って、夕方から

夜行に乗るんだし。」と。



友里恵は「そう。その後もさ、あたしたちはトラベル・ライターになるんだし」



由香は笑顔で「じゃさ、愛紗にくっついて青森行けば」



友里恵「それもいいね。でも、悪いかな、愛紗に」




裏側の廊下はフェルトの絨毯なので、歩き易い。

プールバーの入り口は開いていて、スロットマシンが何台か見えて。



「こういうとこは温泉場っぽいなぁ」と、友里恵。

廊下がすこし低くなってる温泉の入り口に、階段2段。



スリッパだと、コケそうになる。「おっとと」



由香は「転ぶなよ、松葉杖で帰るなんて」



友里恵「それじゃホントに寅さんだよ」



ははは、と笑いながら格子戸デザインのドアを引いて

温泉へ。



ここのお風呂は、男女が日替わりで変わったりしないから


女子にとっては有難い。



なんとなく・・・男の入ったお風呂って汚い感じがして嫌なもの・・・だったりする。

若い娘は特にそう(^^)。


なので、安心なKKR由布院である。



左が男湯、右が女。



墨書された「男」「女」と言う文字と

サインがそれぞれ、青とピンク。



友里恵「なんで女はピンクなんだろね」



由香「アレの色だろ」



友里恵「ハハハ。♪さーもん・・ぴんく♪」



由香「そこまで言ってないよあたし」



友里恵「ハハハ」と、明るく。



格子模様のドアを開けると、下駄箱がある。そこにスリッパを入れて。



竹で編まれた敷物の床に上る。「よっこいしょ」と、友里恵。



由香「太っただろ、重そうだぞ」



友里恵「楽してるからなぁ、ここ一週間」


測ってみ、と、体重計を指差す由香。



友里恵は「自分で乗ってみ」




由香「・・・やめとく」




ハハハ、と・・・ふたり、賑やかに。



「今何時だろ」と、友里恵。



由香は「8時すぎ」




友里恵「今日何曜日?」



由香「金曜日」



友里恵「3ねんーBくみー」



由香「もうやってないよ。金八先生定年で」



友里恵「ひとつの時代が終わったぁ」



由香「それほどのもんかいな」


友里恵「ハハハ」と言いながら、竹の籠をもってきて

羽織と浴衣を脱いで。



白い、かわいらしいボディは、おなかが、てろん。(^^)。


由香は「やっぱ太ったなあ、オマエ」



由香も、同じく浴衣を取ると、日焼けした肌で

やっぱりすこし、てろん(^^)。




友里恵「以下同文」




由香「省略するな」



友里恵「ハハハ」






その頃・・・・由布院駅にはDF200率いるクルーズ・トレイン編成が

ゆっくり入ってくるところ。


水分トンネルを通り、下り坂を静かに、重々しく走るDF200。

久大本線の細いレールは、軋んでしまいそうだ。


ディーゼル・エンジンはごー・・・・と。一定の回転数を保って

発電機を回すが

下り坂の今は、静かだ。


インバータが、下り勾配から受けるエネルギーを電力に変換し

リターダーを掛けている。


運転台では、機関士が編成に軽く制動を掛けている。



新しい機関車の運転台は、どこか電車のようで

未来的にも見える。

武骨な機械、と言うよりは宇宙船のようにも見える。


文字や映像が映るディスプレイもあり、車両の現在位置が

地図表示もされる。


ゆらゆら、のどかに。重々しいクルーズ・トレイン編成の中では

グランドピアノの音が響いて。


楽しげなディナーの最中。


音楽は、ミシェル・ルグランだろうか。軽快である。



さっき、275列車が下ってきた並木道を、かなりゆっくりと下る。

20時を過ぎると、それほどの列車本数もない地域であるので、ゆっくり。


今宵は由布院駅の構内で、列車の中で眠るのである。



右カーブを回りながら、機関士は停止信号を確認。「停止!」


ディーゼルエンジンが回っていて、モータの誘導音もする。

インバータの音もする。



ひゅー・・・・・ん。と、インバータの音がして減速される。


ブレーキハンドルの操作で自動的に。

その辺りは電車のようでもある。


この85列車、さっき豊後森で故障した機関車が率いた列車だが

工務員の修理により、回復した。

コンピュータ制御なので、ソフトウェアよろしく復旧もデジタル的である。


ハードウェアの故障ではなかったのだろう。



右にカーブしている由布院駅構内。


分岐するポイントで、更に右に曲がり構内留置である。

由布院には宿泊施設もあるのだが、面白い事にこの列車は構内に

留置のままで寝台にて就寝、である。


明日、由布院から別府へと観光に向かう。


乗客の好みで、バスで観光する行路と

そのまま列車で車窓を楽しむ行路がある。


同じ行路で戻ってくるので、往路をバス、帰りを列車・・・と

楽しむ事もできる、面白い企画だ。


乗せるだけの列車から、楽しむ列車へ。

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