第465話 turn in my wind

友里恵は「お風呂入ってこよ」と

タオル持って。408号室で



由香は「あたしも行こうかな」と、TVのフラッシュニュース。


OBSニュース、なんて・・ノドカな止め絵のタイトルを

和んで見ていて。


トキハデパートのCMで


おじいちゃん、おばあちゃん向けの。マゴの節句向けCM。


タンゴの節句とか。



由香は「なんか、懐かしいね、こういうの」



友里恵は「おじいちゃん、おばあちゃん、元気なんだろね、このあたり」



由香「自然いっぱいだもんね。長生きできそうだ」



友里恵「トキハって、駅前の。」



由香「そう。愛紗が車椅子をバスに乗せた」



友里恵「ああ、なんかとっても遠い昔の話みたいな気がするね」



由香「この話、進行遅いもん」(笑)。



友里恵「ハハハ。愛紗はすごいよねー。あんなでっかいバスをすいすい」



由香「そうだよねー。指宿でも、路線バスをひょいひょい。」



友里恵「由香もバスの免許取るつもりだったんでしょ」



由香「そうだけどさ」と、しゃべりながらTVを見ているとニュースが終わって

報道バラエティ。



さっき、菜由が見ていた皇族の娘の話が映った。




由香は「くーだらないなぁ」と、chを変えて。



友里恵「あのコもさぁ・・・愛紗みたいに、逃げたいのかな」




由香「え?ああ・・・そうかもね。でも、逃げられる人はいいよ」



友里恵「どういうコト?」



由香「タマちゃんはさ、逃げなかったでしょ。」


友里恵「うん。男だしね。逃げようとすれば・・・逃げられたんだよね」



由香「うん。お父さんが死んじゃって。お兄ちゃんも死んじゃって。

お母さんがかわいそうだから、一緒に住んであげているって」



友里恵「恋人もつくんないでね」



由香「うん。でも逃げようがないじゃん。そうなったら。

どうしたって。ひとりしかいないんだし」



友里恵「それでも逃げる人は逃げるよね。」



由香「ま、他に好きな事があるんだろうね。そうでないと・・・あんなに

ノドカじゃいられないよね。欲求不満ーってカオになる」



友里恵「まあ、タマちゃんにはあたしがいるもーん」


由香「ははは。乗っちゃいな」



友里恵「ホント。」



さ、お風呂いこー、って。由香もタオル持って。



KKR由布院、って書いてあるタオル。「これ、思い出になるね」と、友里恵、にこにこ。



由香「旅っていいなぁ」



友里恵「うん。由香さあ、契約になるんだったら。

運転手目指すの?」



由香「わかんなくなってきたね。ライターで食えれば、やんなくていいかもしれないし。」



友里恵「そうだねー。あたしら気楽なひとりだから、いいけどさ。」



由香「いいんだか、どーだか」と、408、と書かれたブロンズのキー・ホルダーを持って


スリッパ履いて。


お風呂いこ、って・・・・。マホガニーの重厚な扉を開けた。

廊下は、静か。すこし暗めに灯りが落とされていて。



友里恵「なんか、温泉マークみたい」



由香「温泉じゃん」



友里恵「関西じゃ、アレはツレコミの意味なんだって」


由香「へー。知らなかった。じゃ、友里恵は温泉まーく好きなんだ」




友里恵「まさか」




由香「ハハハ」



静かな、絨毯敷きの回廊を歩きながら。エレベータ・ホールへ向かう。


天井にある、小さな灯りがぼんやり。それだけの空間で

空には☆が。


2階の屋根は、屋上庭園になっている。



友里恵「愛紗はさ、これから青森に受験しに行くんだよね」



由香「たぶん・・・会社が許せばね」



友里恵「それがあるのか・・・でも、どっちみち」



許さなくても、退職するか・・・しばらくガイドで残るか・・・・かな。


なんて、思いながら。



エレベータの▼ボタンを押した。



なんとなく、眩いくらいに明るく見える。

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