第450話 チャイコフスキー「12月」

「いこっか」と、友里恵が言うと、

玄関の方から、たまが、とことこ。

お座りして。


じーっ、と見てて。



パティは「たま?一緒に行きたいの?」と

たまのところへ、ととととーっ、と、歩いて。

しゃがんで。なでなで。



たまは「にゃ」。目を閉じて、すりすり。



友里恵は「たまは、淋しかったのかな」



由香は「ああ、そっか。ネコ語わかるん」




パティは「そっか・・・夕べ、帰れなかったから。」



友里恵「じゃ、一緒に居てあげたら? おかーさんも、その方が淋しくないし」


パティは、にっこり「そうですねー。お肉はいつでも食べられるし・・・・ここ、ちょっと行くと

A-coopがあるから。あそこでダンボール貰ってくればいいですね」



由香も「うん、そうする。ありがと」



友里恵も「ありがとー、じゃね」と・・・・。日高家を後に。



たまは、パティと一緒にお見送り。




由布見通りから、写真屋さん、大分銀行・・・と、歩いて

A-coopに。



表に、ダンボールが置いてあったりして。



友里恵「あったあった。いっぱいー。」



由香「勝手に持ってっていいの?」



友里恵「いいんじゃない?ゴミだし、残れば」


テキトーに4つ。


カルビーのポテトチップスとか、そういう・・軽めの箱ではなくて


日田梨とか、庄内柿とか。そういう、丈夫そうな箱を貰ってきて



友里恵「かぼすもあるねー」


大分かぼす、なんて書いてある、白いダンボールは結構、頑丈そう。



「送る荷物はそんなにないしー」と、友里恵。


由香「おみやげくらいか」


友里恵「パンツとか」


由香「キタネーなぁ」




友里恵「キタネーのが好きだっておっさんが喜ぶ」



由香「ハハハ。タマちゃんかい」



友里恵「タマちゃんはいーの。直接、中身あげる」



由香「ハハハ、アカルイハダカか」



友里恵「篠山なんとか」



笑いながら、ふたつづつダンボール持って。



友里恵「けっこかさばるね」



由香「カブってあるけ」




友里恵「エレファントマンかと」




由香「それは古すぎないか?」




友里恵「ハハハ」と、カブって歩く。



由布見通りは、足元が結構凸凹してて。


舗道と車道の間が、かまぼこ型になってて。



ステン☆



友里恵「いったーい」



由香「アホ」





笑いながら、白滝川を渡る。




ケーキ屋さんも、店仕舞い。

黄色い電灯だけが、明るい。



川を渡る風、涼しい。

川面の、かもちゃんも・・・見当たらない。


島に上がって、おやすみタイムなのかな。






そのまま、堤防沿いを歩く友里恵。


「エレファントマン」とか言いながら




由香「また転ぶぞ」



友里恵「こんだ、下見てるから」



由香「こんだ?」



友里恵「重いーこんだーら♪」



由香「なんか違くないか、それ?」



友里恵「コンダラが重いんだよ」





由香「そーだったかなぁ」




とか、歩きながら・・・KKRの裏へ。

温泉の湯気が・・・ふわふわ。




友里恵「どこだろ、女湯」



由香「見えっこないじゃん」


友里恵「そりゃそうだけど、愛紗が入ってるかと」




由香「まだじゃないの?」



友里恵「そうかもねー。」


とか、ダンボールかぶってあるいてると


砂利道になって。





コテ☆





由香「ばか」と、笑った。





川の向こうから、ピアノの音。



友里恵は「12月」



由香「4月だって」




友里恵「曲名」


由香「あ、そっか。」



友里恵「チャイコフスキーの12月」



由香「うわー、お嬢様ー」



友里恵「藤野でございます」



由香「ぎゃはは、にあわねー」



友里恵「あたしもそうは思ったんだけどサ。結婚すれば苗字変わるし、ま、いっか」


由香「深町・・・でも、なんか、よけいお嬢様っぽくないか?」



友里恵「奥様じゃん」



由香「貰ってくれればのハナシ」



友里恵「たしかに」


と、ふたり、笑いながらKKRの裏口、駐車場の重い鉄扉から入ろうかと。



ダンボール持ったままだと、ノブが回らない。


友里恵はかぶったままだから、なおさら。


「うー~」と、唸りながら。


由香「降ろせばいいじゃん」





友里恵「見てないで、アンタが回せ」



由香「そりゃそうだけど、面白いから」




友里恵「面白がってるな!」



ハハハ、と、ふたり、笑う。

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