第438話 モザイク・タイル

ほぼ、機関車の「運転」と言うよりは

機械の操作と言う感じ。


空気のコックを閉じたり開いたりと言う感覚だから。


それで、巨大な機関車を動かすのは

一種独特だ。


微妙な開閉は出来ないから、断続で行う。

それは、DF200のインバータが

断続を繰り返す事で、交流に似た状態を作っているのに

少し似ている。



貨車を連結するとき、動力を少し与えると

慣性で重い機関車が進む。


それを、ブレーキ。機関車単弁を

開閉する事で、微妙に進む。


動き、慣性を腰で感じて・・・停める。

空気ブレーキは、効きすぎるし、微妙な加減が難しい。


行き過ぎれば、がちゃん、と衝撃がある。

手前なら、つながらない。


それを、連結手の手旗信号をみながら決めるのは

難しい。






湯平駅は、トンネルを出ると直ぐに分岐している。

小さな駅だが、以前は温泉駅として栄えた跡らしい。



湯平温泉は、駅から離れている

静かな温泉街である。


1番線ホームに275列車は、静かに到着する。



機関士・理沙は編成制動弁を0ノッチのまま、慣性で停止位置まで持っていく。


その時の乗客の数でも違う。これは、感覚でしかない。

体に感じる慣性、だ。



すーっ・・・と、停止位置が近づく。



車掌・洋子は

4号車・車掌室の窓を開け、トンネルを通過すると

停止位置を確認した。






機関士・理沙は先頭、DE10 1205機関車・運転席で

ホーム先端にある停止位置を確認。


かわいい、白い駅舎が流れ去る。



「ホーム、安全よし!」



人影はない。



2番線は、あまり使われない駅である。


駅舎の殆どは郵便局、農協が使っており

切符販売を委託している。



駅の待合室には、手作りの座布団があって

ネコがよく、寝ている(^^)。






▽ 



停止位置。



DE10 1205の先端を見極めるのも難しいのだが

理沙は、機関車を停止させる。



編成ブレーキが緩み切る前に、停止。



ぴたり。



再度、編成制動弁を常用最大位置。

機関車単弁も。



停止!。



「湯平、停車。 -5秒!」と、理沙は

計器板にある時計で確認。




薄い緑に塗られている計器板は、どことなく

昭和の国鉄時代・標準のイメージがある。


キハ66や、キハ58も

壁などはこの色で塗られていた。






最後尾・車掌室で

窓から、少し顔を出して「停止位置、よし!」


と、右手でドア・スイッチを上げた。



ドアが、ばたり、と開いて。

洋子もデッキから、ホームへ降りる。



2号車から、文子がホーム改札。


定期券の乗客ばかりで、改札は楽だ。



湯平温泉に列車で行く人は少ないようである。





理沙は「残業になっちゃったこと、どうして知らせよう」と思った。

乗務中は携帯電話の操作はできないし・・・・。


見られなければいい、とは言うけれど。



「あ、そうだ。庄内駅で降りるだろうから。機関車に来るでしょう、たぶん」



来なかったら、それはそれで。いいか。と・・・アバウトなところもある理沙である。



そのあたりは、どっしり。安定感のある津軽娘(^^)。


なんといってもまだ25歳である。



運転席から離れてはいけないので、仰け反ってホームを見たり

ホーム先端にあるモニター・ミラーで見たり。



乗降はないようだ。







KKR由布院の、豪華なシャンデリアに圧倒される、ライターさん。



白い、モザイクタイルで覆われたエントランスの階段も、いかにも高級そうだ。

足もとはよく汚れるので、綺麗に保つのは大変なのである。

こうしたデザインを採用するのは、即ち高級、だ。


A寝台車のフロアが、毛足の長いカーペットであったりするのに似ている。


近年の九州地区の電車特急でも、木の、塗装された床であったり

レザーのシートであったり。


そういうデザインを採用することにも似ている。

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