第437話 トラベルライター

友里恵は、駅前広場をまっすぐ。

左がわのお土産やさんに「風の遥か」のポスターが貼ってあったり。


「なんとなく、高森みたい」と、友里恵が言うと


由香は「ああ、そういえばそうかも」


駅に面して広場があって、バス乗り場とタクシー乗り場。

区切ってるわけでもないけれど。


パティは「高森線も、つながればこんな感じだったんでしょうね」



友里恵は「ああ、トンネル公園いかなかったー」



由香は笑って「また今度」




パティもにこにこ「すぐそこですから」



友里恵は「由布院からは、ね」



由香は「このあたりって、大岡山と感じが変わらないから・・・・遠くに来てる

気がしないね」




歩きながら。右手には赤司日田羊羹のお店があったり。

左手には駅前のペンション。


二階が焼き鳥のお店があったり。


明日までしか見れないと思うと、なんとなく淋しくもある風景。



「写真撮っとくんだったなぁ。」と、友里恵。



由香「心に残しておけば」



と言うので、友里恵は、つい「心かい」



由香「いいたいことはわかるが」



友里恵「なら言うな」



由香「さあ、宿行こうか。今夜は焼肉だぞー」



友里恵「ももちゃん待ってるね」



駅前交差点は、三叉路のようで

実はふつうの交差点。面白い道筋である。


友里恵は「Y字路の真ん中にスジ」



由香「それ以上言うなよ」



友里恵「真ん中スジー」



由香「ま、そこまでにしとけ」



友里恵「ハハハ」



右手にパチンコ屋さんがあるけど、今は閉まっている。

まーっすぐ向こうは、国民宿舎と、ダイエーがあるあたりで

美術館と、川の畔に出る。


交差点の左手は、農協の売店で

お弁当とか、お野菜も売っている。のーんびりしたところ。

神社があって、鳥居の真ん中をその・・・スジが通っている(笑)。



友里恵「やっぱさー、鳥居があるのは神聖なんだ」



由香「スジが?」



友里恵「観音さま」



由香「・・・まあ、セーフだな」



パティ「セーフ!」と、両手を広げて。



友里恵「野球少女!」



パティ「プリティリーグ!」



由香「そんなのあったなぁ」



友里恵「自分でかわいいっていうなーっていわないのかい」


由香「ホントにかわいいもん」




友里恵「モンって言うかい、あんた」




由香「うるさい」



パティ「ハハハ」




3人はにぎやかに、左手に曲がって

電気屋さんの前、由布見通りを歩く。


お土産やさんのところ。



さっき・・・文子に案内された旅のおばさん。


マジソンバックみたいな袋を提げて。


干した大根とかを見てる(笑)。



おばさん「旅ですかー?」と、友里恵たちに。


友里恵「ハイ」


由香「同じく」


パティ「わたしは住人です」



おばさん「そう、わたしも旅なの。耶馬溪から来て。さっき。

ライターをしてるんですけど、写真撮っていい?」



友里恵「火?」



由香「書くほうだって」


友里恵「背中を?」



由香「違うって」



おばさんは、ハハハ、と笑って「コメディエンヌですか?」



由香「いえいえ、バスガイド」




パティ「わたしは国鉄」



おばさん「いろいろなのねー。」と、にこにこ。


「ガイドさんの仕事?」



友里恵はいえいえ、と笑って「話すと長いから、わたしのお宿で。

そこのKKR」と言うと


おばさんもびっくり「わたしも、KKRなの、じゃ、一緒にいきましょ」



と・・・3人+1で・・・。



おばさん「フリーで、トラベルライターしてるの。旅しながら。」



由香「いい仕事ですね」



友里恵「あたしもしたいなー、旅暮らし」



4人は、KKR由布院の立派な、高級ホテルみたいな門から。

全部、白いモザイクタイル。


路面までそうなので、相当高級に見える。



普通、路面はアスファルトにしてしまうから。




エントランスはオール・グラスでサッシがない。



おばさんは「高そうねー」




由香「でも大丈夫だって。」



おばさん「そうそう、トラベルライターしたいんだったら、あたしの行ってるとこに

紹介してあげる」



友里恵「えー!?ホント?」







愛紗たちの乗った275列車は、下り勾配をカーブしながら進み

山間いになる。



トンネルに近づく。



理沙は、警笛を、ふぃー、と鳴らして。



DE10 1205の警笛は、なんとなく悲しげな響きだ。



慣性走行で、トンネルに入る。


妻面は、昔ながらの煉瓦積みで

天井の部分は、黒く煤けている。



久大本線は、比較的無煙化が早かったが

それでも、黒く沁みている。




ヘッドライトは点いているので、そのまま。


トンネルに、エンジンの音が響く。


ごーー・・・。と。

さすがにV12、61Lだけの音がする。


トンネルを出るとすぐに駅なので、理沙は右手、下の

編成制動弁を引いてある。



トンネルを出るあたりで、解放。


0ノッチ。



しゅー、しゅしゅ。



解放を確認。2回。



すこしづつ緩みながら・・・減速していく。



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