第434話 とらばーゆ

335D、後発の大分行きに揺られている友里恵、由香、パティ。

もうすぐ、水分峠を越えて由布院である。


パティは、ふと「友里恵は、お父さん好きな子?」



友里恵「うん」

こっくり、と頷いて。


由香「お父さん汚いからいやー、なんて言わなかった?」

笑いながら。窓際で。さっぱりと短くした髪は、少し赤っぽい。さらさら。


友里恵「ないなぁ、そういう記憶。パティは・・ないよね。船長さんじゃ」

長めの髪は整っていて、綺麗にナチュラル・ブラウン。

肩にかかるくらい。


パティはにっこり。うなづく。ふわふわブロンド、青い瞳を閉じて。

生きてるお人形さんみたい。




友里恵「ピンカートンさまぁ・・・だもんなぁ。

白いおひげで、パイプ咥えて。大きくて・・・穏やかで」




由香「なんかさ・・・ヤマトみたい」



友里恵「船長!」と、右手を胸の前で。



由香「10×なよ」



友里恵「ハハハ」


パティ「おひげはないです。おじーさんでもないし」



友里恵「イメージだって」

と、笑って。


由香「ハハハ」



パティ「ふつー、おとーさんの後でオフロ入るのいやー、とか言うそうです」




由香「成年心理」


友里恵「成年って言うと、なんか危ないじゃん」



由香「オマエが好きなやつ」



友里恵「好きじゃないよ」



由香「ウソウソ」



友里恵「たまーに見てたりして」



パティ「ハハハ。クラスメートが見てたな。スマホで」



友里恵「男?」


パティ「女子高だもん」



由香「ああ、そっちのか」



パティ「そっちって?」



友里恵「♪好きよ、好きよ、キャプテン」



パティ「???」



由香「相模の方言」



友里恵「ベンリだな、それ」




由香「ハハハ」





パティ「じゃ、由布院で降りますか?」



友里恵「そうだね。よく考えたらさ・・・今夜も泊まるんだもん。KKR。

精算できないじゃん。明日じゃないと」



由香「あ、そっか」


パティ「愛紗は、庄内へ行ったんでしょうか」



友里恵「愛紗はね。伯母さんに会いに」



由香「進路の話しもあるしね。あたしらが居ないほうがいいかも」



パティ「いろいろ、気をつかいますね。お友達でも」



由香「そりゃそうだよ。乙女だし」


友里恵「ダレが?」


由香は少し恥かしそうに「あたし」



友里恵は、笑いを堪えて「自分で言うかねぇ、アンタが」



パティは「由香、かわいいですよ」



由香「そう?」




友里恵「気遣いだって。」




由香「ハハハ。なるほど」




かたこん、かたこん・・・・・。キハ31型、ディーゼルカーは

下り坂に差し掛かった。




運転士さんは、計器盤から生えている

主幹制御器レバーを、前に戻す。


0ノッチ。


右側の、手前に立っている制動制御器レバーを手前に引くと

パネルにあるランプが点灯。



排気ブレーキが掛かる。



折り戸になっているステップの脇にあるマフラー、ボディパネルに覆われているが

その向うで、しゅー・・・・と。

排気が漏れる音がする。


排気管に蓋をしているのである。





パティは「一週間の旅、どこからどこまで?」



由香は、思い出すように



金曜 寝台特急「富士」

土曜 日野家

日、月曜 指宿KKR

火 人吉KKR

水 南阿蘇KKR

木、金曜 由布院KKR




「なわけ」





パティは「楽しい旅でしたねー」



友里恵「それだよ!やっぱパティはいい子だなー。」



パティは、びっくり。「そうですか?」


友里恵「そーだよぉ。由香だったら

「あとは帰るだけ」

なんて、嫌な事言う」



由香「オマエが言ってるじゃん」


友里恵「あ、そっか。ハハハ。」



パティ「ずーっと、旅してたらいいですねー。」




友里恵「パティはCAなんだから、ずーっと旅」


パティ「そーですね。(^^)お仕事がなければ。友里恵もガイドさんでしょ?」



友里恵「そーだけどぉ・・・ああ、思いだしたくなーい」



由香「とらばーゆしよっ」



友里恵「古いなぁそれ」



パティ「ハハ、知りませーん」



由香「そりゃそうだ」




楽しい3人だと、そんなに・・・旅の終わりも暗くなーい(^^)。

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