第386話 かわいい文子ちゃん

同じ頃・・・回送列車に乗せてもらっている愛紗と、菜由は

のーんびり。

ごとごと揺れるトロッコではなくて、客車の中で。



車掌の洋子と、CAの文子も一緒。


愛紗は「車掌のお仕事、楽しいですか?」



洋子は、ちょっと唐突だったせいもあって「え、あ・・・はい。厳しいなーって

思う事もあります。眠いときとか。」



菜由は、ねっころがっている(笑)。



愛紗は「そうなんですね。私はバスガイドしてて、やっぱり眠いなーって・・・。

CAさんもそうですか?」



文子は、メイドさんルックがちょっと気になっているのか、胸元に掌。

「はい。眠い・・・・のもそうです。私は、この服がちょっと恥ずかしかったり」

と、ちょっとほっぺた赤くして。




洋子は「かわいいのに」と、にこにこ。



文子、かぶりを振って「かわいくないですー」と。俯いて。


愛紗は「とってもかわいいわ。私も、バスガイドの制服、最初はちょっと恥ずかしくて」



文子は「どこのバス会社ですか?」



愛紗は「東山急行」と。



洋子は「はい。華やかな感じですね。色合いが。春のお花みたいで」




愛紗は「最初はちょっとニガテでした。キュロットスカートは安心だったけど」



と言うと、文子も「これ、中は見えないんですけど・・・ズボンみたいになってて」



洋子は「それならいいじゃない」と、笑顔。



でも文子は「脚だすのが・・・太いし」


と、ちょっと唇を尖らせた。

柔らかそうな唇が、可愛らしい。何も塗っていないみたいだけど、桃色で。

白い丸い頬、ひとえ瞼。


愛紗は「そんなことないわ、かわいいわよ。お人形さんみたい」



そういわれると、文子は赤くなって「そんな・・・・わたしなんて」



洋子は「愛紗さんは、ガイドさんなのですか?」



愛紗は「はい。でも、ドライバーになろうとして免許取って」



文子は「かっこいいですね」と、にこにこ。まだ、頬が赤い。



愛紗は「でも、怖くなって。辞めちゃうつもり」と言うと


洋子は「そうですね。バスの運転手さんって、どちらかと言うと

男の方が多いですね」



愛紗「はい。それで・・・大分になにか、いいお仕事がないかなーって

休暇取って、旅行がてら、来ちゃいました」と、にこにこ。


菜由は、寝転がったままで、その愛紗の口調まで

明るく、女の子らしくなって。


「よかったね、愛紗」と・・・・心でつぶやく。



無理なんて、することないよ。








トロッコ編成は、ことこと・・・ゆっくり。

豊後三芳駅を通過する。



DE10 1205の機関室では、機関士、理沙が


仕業票を確認。「豊後三芳、通過・・・・早着、5秒」

ホームを確認。「ホーム、注意!」


何人か、人影。



警笛ペダルを踏む。



ふぃ



と、警笛を鳴らして。


ヘッドライトを上目。



編成ブレーキ弁に右手を掛けて・・・・。


逆転機は中立のまま、慣性走行である。




かたたたん・・・かたたたん・・・・。






日田バスターミナルの3人は、ひためぐりバスに乗った。


折り戸になっている中扉が、乗降扉らしく

他にはない。


マイクロバスの改造みたい。



冷房が掛かっているあたりが九州、である。

まだ4月なのに。



最後尾は、板張りのベンチシートで、由香は「ちょっとお尻に来るな」


友里恵は「でっかいからなぁ」


由香「おまえのがでっかいだろ」


パティ「アタシガイチバーン!」と、人差し指たてて。



由香「猪木かよ」


パティ「イチニッサン、ダー!」



友里恵「時々アメリカジンになるなぁ」


パティ「ハハハ」



板のシートは痛そう(笑)なので、手前の長いシートに3人、掛けた。



バス・ターミナルのアナウンスが響く。


ーーー3番線、ひためぐりバス、発車しますーーーー。



と、簡素。朗らかなお姉さんの声。





運転手さんが来る。

白髪のおじいさん。にこにこ。四角い顔。日焼けして。

グレーの帽子をかぶっている。


白いYシャツ、半袖。

グレーのズボン。



ネクタイはなし。



「発車しまーす」と。言って。



3人は「はーい。」と、なんとなくお返事。






ドア・スイッチは運転席の右側。



運転手さんは、シートに座って。



スイッチを前に倒す。




マイクロバスのように、電子ブザーが、ツー、と鳴って。



空気シリンダーの音が



ぷしゅー・・・。




ドアはぱたり、と閉じる。




運転手さんはマイクで「ひためぐりバス、発車します」と。



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