第387話 回9002列車、豊後三芳、通過!

ひためぐりバスは、マイクロバスのシャーシ、のようで・・・。

ただ、前にボンネットをつけたから、定員が半分くらいになっている。

このバスはATで、元にしたマイクロバスと同じようだ。


ふつうの乗用車と同じ、インパネシフトAT。

運転席が、ふつうのマイクロバスで言うと中扉の左前の席あたりについていて。

そこに誂えた運転席。


運転手さんは、ポカリスエットのペットボトルを持って来て、窓際に置いて。


既に、エンジンは掛かっている。

エアコンを掛けるので。



手袋はしない人みたいで、日焼けした左手で指差し確認。


「前方、よし、左、よし、右、よし」と。


車内は良く見えるので、省略。


右ウインカーを付けて、バスセンターから出た。


ここのバスセンターは面白い構造で、ロータリー状になっていて。

信号がひとつ、そのバスセンターの裏へ入るためについていたりする。

7mのボンネットタイプ、ひためぐりバスは楽々だけれども

12mの観光バスだと、無理なので


表通りから、ぐーっ、と大回りして

オーバーハングすれすれにバスセンターの屋根をかすめて。

回り込む。



慣れてしまえば簡単だけど、見ていると神業のよう。


そうやって、12mの観光バスタイプが入ってくるのを横目に

ひためぐりバスは、駅前へ真っ直ぐ。


目の前に 日田駅 と、赤い文字の看板が屋根に立っている駅舎。


それを見ながら信号待ち。



角は、ショッピングセンター。


信号が青になる。


横断歩道の人を、まず確認の運転手さん。

ボンネットタイプなので、ふつうのバスよりも見えないところが多いから

先を読んで。


横断歩道信号を待っているひとを、覚えておいて。


だーれもいなくなるまで。

後ろから急かされても、無視(笑)。事故になったら自己責任である。



幸い、日田には急かす人はいないし

ここはバスセンターの信号なので、後ろは皆プロである。


たまーにプロでも、ヘンな奴はいるが(^^;



そういう奴は、やがていなくなる厳しい世界。



ひためぐりバスは、ゆるーりと。

前が長いので、ドライバーとしては普通の車に似ている運転感覚。



がらがらがら・・・と、6気筒ディーゼルエンジンが回る。

どこか、軽快だ。



友里恵は「これなら運転できそうだね」



由香「そうかも」



パティ「私、わかりません」



由香「車乗らないの?」



パティは「ハイ。駅に近いし。バイクの免許は持ってますけどー」

にこにこ。


友里恵は「ワタシ、ワカリマセーン」と、ふざけると


パティ「車内ではお静かに」と、冗談っぽい。



友里恵「ハイ」



由香「よしよし。いい子いい子」





ひためぐりバスは、駅前の商店街を通る。

歩道の上にアーケード。



友里恵は「なんか、なつかしい。山北とか・・・御殿場みたい」



由香「そうだねー。昭和かな」



友里恵「うわーおばさん」



パティ「♪わたしは、おばさんになーって」


友里恵は「車内ではお静かに」


パティ「ゴメンナサーイ」


由香「急にアメリカジンになるな」



運転手さんは笑って「大丈夫大丈夫。」



友里恵は「じゃ、カラオケカラオケ」



由香「ちょーしにのるな!」


友里恵「めんごめんご」




ひためぐりバスは、普通の路線バスなので、こまめに停留所のアナウンスを流す。

運転手さんの右手のあたりにある、黒いスイッチ。それを押すと流れる。


手前にあるボタンがふたつ。

左を押すと、元に戻り

右だと、先に進む。



運賃表示機が、その度に変わる。


小さな交差点。青信号。

右に曲がるので、車体を少し中央に寄せる。


上手い運転手さんだと、左側を自動車が通れる。


右に出すぎると対向車の迷惑だから、頃合。



日田は、静かな町だし

午後の今は、空いている。


ボンネット・バスのフェンダーにある右ウィンカーを点滅させて

ひためぐりバスは、右へ。



目前、煉瓦積みの苔むした築堤、トンネル。


友里恵は「雰囲気あるね」

由香「ほんと」




トンネルをくぐる。


がらがら・・・・と言うエンジンの音が響くけれど、ほんの一瞬。







回9002列車は、豊後三芳を過ぎる。


機関士、理沙は左向きの運転席で「次は・・・豊後中川、通過!」と

仕業票を確認しながら。


逆転機は中立位置。速度20。



トロッコ客車にもし、人が乗っていると

飛び跳ねたら危ない。


空の無蓋貨車と似た状況だから。

自動連結器だから、間隙も密着自動連結器よりは大きい・・・。


そんなことを考えながら、理沙は後方を振り返る「後部、異常なし!」



指差して確認。





トロッコ客車の屋根は、そんなにゆらゆらしてはいない。




再び、前方を注視。


エンジンはアイドリングなので、静かに、後ろのボンネットで

ドロロロ・・・・と。

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