第373話 9001列車、豊後中川、通過!

「次は、豊後中川・・・・通過!」と、理沙は仕業表を指差して。


愛紗も「豊後中川・・・通過!」と。同じく。


思う。


理沙さんは、アルバイトをしてまで機関車職を選んだんだな、と・・・。



そのくらいの魅力は、ある仕事。



勾配が平坦になる。



理沙は、逆転機レバーを中立にした。


クラッチが離れ、エンジンはアイドリングになる。


マスター・コントローラを左手で0。



編成は、かたたたん・・・かたたたん・・・・。



速度、20。



ビールを飲んで、景色を楽しむ列車だから

ゆっくりゆっくり。



愛紗は思う「わたしも・・・アルバイトなら入れて貰えるだろうか。機関区に」



ふとした思いつきだったが。




理沙に尋ねようと思ったが・・・・・運転中だから、と・・・控えた。

自身もドライバー(運転士)なので。



でも、理沙の方から「機関車、いいでしょ」と、にっこり。


愛紗は「はい。私も乗ってみたくなりました。青森に行ったら、アルバイト、使って貰えます


か?」



理沙は「アルバイトだったら入れると思う。大分だって入れると思うけど・・・」


と、そこまで言って。

前方注視。


信号確認。



「閉塞、進行!」


左手で。



愛紗も一緒に。「閉塞、進行!」



理沙は「本気なの?」と、にっこり。



愛紗は「はい。ダメでもいいから試してみたいと思います。」



理沙は、頷いた。にっこり。



下り勾配なので、少し速度が上がり・・・・逆転機を左へ。


高速段。


エンジン・ブレーキが少し掛かるけど、トルクコンバータだから

ゆっくり。





線路は高架。


地上には国道。軽自動車に乗っている小さな子が

後ろの席で手を振っている。



トロッコの乗客も、手を振っているのだろう。



友里恵も、機関室から手を振った。



道路は、高架線の下をくぐり、線路の左側へ。



その、子供たちは手を振っている。


機関士の理沙は、空気笛ペダルを押して ふぃ、と、鳴らす。


左手を振った。




かわいい子は、喜ぶ。



線路は、トンネルへ。







トロッコ客車では、どこかのオジサンたちが上機嫌。


パティに「おー、アメリカのお姉ちゃん、のめのめ!」と。

どっからか持ってきた一升瓶。



茶碗で、なみなみ。



パティも、ぐい。




菜由は「あ」



パティは「ふいー」。と、腕で口を拭い・・・・「も一杯」



おじさんたち、喜ぶ。「おー、あんた、いける口だねえ。寿司くいネェ。江戸っ子だってねぇ」



おじさんたちも酔っ払っている(笑)。

どっかの役所の人だとおもうけど・・・・・(^^;




文子は、メイドさん服で「あーあ・・・・・(^^;」







洋子は文子に「まあ、非番だから・・・黙ってましょね。」

文子も、きまりワルそうに、頷く。にっこり。








トンネルを出ると、豊後中川駅である。





駅表示が、レールの左に立っている。



と、縦書きの小さな看板。



機関士、理沙はそれを確認。「豊後中川、通過!」

左手で。



愛紗も「豊後中川、通過!」と、左手で。



なんとなく、嬉しい。これが、したかった。



不思議な気持だったり。




理沙は愛紗に「行くなら、紹介してあげる。でもね、大変だから。

普通に職員試験受けた方がいいと思うけど・・・・。」と。




座ってるから、上目で見て。にっこり。






豊後中川駅が、近づいてくる。


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