第366話 DE10

♪ぴんぽーん♪


車内放送のチャイムが鳴る。



ーーまもなく、終点、豊後森です。全てのドアーから下りられます。

降り口は左側、3番線に着きますーーーー


と、録音の、優しげな女の人の声で、車内アナウンス。



左側に、先週見た

黒い、扇型の車庫が見えてきた。


あちこち、硝子が割れていたり、黒く煤けていたりする

昔の機関庫だ。



ひろーい構内。昔は、蒸気機関車が居たのだろう。


1番線には、既にトロッコ編成が待っている。



友里恵は「あ、あれ?」



理沙は頷く。「そう。」



レンガ色のディーゼル機関車。DE10 1205とある。

その後ろに緑色に塗られた客車、トロッコが一両づつ。


トロッコ、と言っても

屋根のない貨車に、テントの屋根をつけたもののようだ。



パティは「この列車は、終点?」


理沙は「確か、トロッコが出る前に・・・久留米ゆきになるはず」




由香は「面白いね。そのまま直通しないんだ」




かたこん、かたこん・・・。Y-DC125はゆらゆら、揺れながら


豊後森駅の構内に差し掛かる。



場内、停止! と、運転士さんが信号確認。



ぢゃーん・・・と、警報ベルが鳴り


きんこん、きんこん・・・と、チャイム。


赤いボタンで確認、よし!。




先ほどより、排気ブレーキが掛かっている。


固定2段。ゆっくりブレーキ。



屋根の上の排気管から、空気の音がする。


しゅー・・・・・・。



床下のエンジン、どこどこどこ・・・・。




速度が20くらいになって、機械ブレーキを掛ける。



操作盤の赤いランプが、2つ。



きー・・・・きき。



赤いランプ、1つ。



停止位置。


赤いランプ、0。



停止位置、よし!。



滑らかに停まる。熟練の技。



ドア・スイッチを開く。



ドア、開!。




ぷしゅー・・・・・。



がらり、と扉が開いた。




理沙は「さ、いきましょ?」



友里恵は「楽しみー。」



愛紗と菜由も、向かい合わせシートから降りる。



島のような3番ホームに降りて、振り返ると

豊後森機関区の跡が、大きく見える。





ひろーい空間。電線が無いからより、広く見える。



駅舎は、機関区の反対側の1番ホームの方にある。


ふつう、1番ホームは駅舎の方にあるので、豊後森駅も同じように作られている。

鄙びた木造の駅で、友里恵は「山北そっくり」



由香も「ほんと」



理沙は「ああ、御殿場線の山北?そうね。あの駅も機関区があったから

似てるかもね」と、にこにこ。


運転士さんに「ありがとうございます」と、お礼を言って。



友里恵も「ありがとうございますー」



由香も「おつかれさまでした」


運転士さんは、日焼けの顔で、帽子を取って「ごくろうさま」



理沙は「このコね、運転手さんになりたいって」



運転士さんはにっこり「へえ、高校生?」



由香は笑って「いえ、21」



運転士さんは「かわいいから、高校生かと思った」



パティは、にこにこ「ホント、かわいいものね友里恵」


友里恵も、にこにこ。「そーかなぁ」


コンクリートの、島のような2番・3番ホームに下りた。



愛紗は、ディーゼル・エンジンの響きと振動が、なんとなく懐かしい。


日南線もそうだったし・・・・・大岡山のバスもディーゼルだった。



そんなことを、ふと思い出す。

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