第355話 7021D,由布院、定発!

パティが「友里恵ー、列車乗るよー」と。駅の向こうに声掛けて。


友里恵は「にゃんぱすー」



由香「それは最近だな、割と」



愛紗は「なにそれ」



菜由は「いいの。ふつーは知らないもの」



愛紗は「なーにそれ?友里恵はふつーじゃないの?」



由香「ちょっとな」



パティ「ハハハ」



友里恵は戻ってきて「なに?黄色いの、乗るの?」


由香は「うん。理沙ちゃんがね、豊後森まで一緒に移動だって」



友里恵は楽しそう。「あ、そっか。トロッコ機関車運転するって」


由香「そうそう。「ゆふいんの森」が出たら、すぐだって。

ともちゃんと、さかまゆちゃんも乗ってる」



友里恵は「どこかなぁ」と・・・列車のいない2番線ホームから眺めた。



菜由は「3号車あたりかな?ビュフェだって言ってたから」




友里恵は「きっと、一生懸命働いてるね」



愛紗は「そうね・・・」と。グリーン・メタリックの車体を眺めた。




お客さんが乗り込むと、空気ばねの車体はゆらゆら揺れる。



高いところに座席があるから、ふんわり、ふわふわ。



由香「行くときのったっけね」



友里恵「うん。楽しかったね。お弁当食べて。景色みて。

また乗りたいね」



パティは「行くときも乗ったの?」



友里恵は「そう。大分駅でね。停まってて。乗っちゃった」


パティは「ハハハ。よく乗れたね」



愛紗は「空いてたの。たまたま。」



菜由は「乗れないこともあるの?」


パティ「ハイ。満席だと・・・次の駅で降りて・・・ってキマリですけど。

大抵はどこかに乗っていってしまいますね」



そのうちに12時が近づいて。

列車があまり揺れなくなって。



友里恵は「あっちのホームにいるのかな」と・・・

階段を駆けて行った。



由香「あ、友里恵!こっちもすぐ出るよー」



友里恵は「だいじょーぶー」と、階段を駆けて。



1番線ホームへ降りた。




3号車のデッキのところに、さかまゆちゃん。


すらりと立っていて。


黒いスーツがお似合い。



友里恵が駆けて来たので、にっこり。


「それじゃ、行ってきます」と、敬礼のポーズ。にっこり。



友里恵も敬礼。(^^)元気でねー。



さかまゆちゃん、ちょっと淋しい笑顔。

涙ぐむ。



ともちゃんは、デッキの後ろで。


泣いていた。



12:00。


車掌さんの笛が鳴って。


グリーンのドアが閉まる。


ガラスの向こうで、さかまゆちゃんは小さく手を振って。

白い手袋が揺れている。




ふあん。



列車のホーンが鳴って。



ごーぉ・・・・・と。「ゆふいんの森」は、走り出す。



重々しいディーゼル・エンジンの響き。


上り坂を、ゆっくりゆっくり。




レールを踏みしめる音が、地面から響く。



どどん・・・どどん・・・。



まるい、列車の最後尾が

煙と共に・・・・左カーブに見えなくなった。



「あーあ、行っちゃった」





由香が「ゆりえー、出るよー」



友里恵「なにが?」




由香「あんたの乗る列車!」


友里恵は、駆け出して階段を昇った。



「3番線、3番線!」





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