第352話 かみばーっく

玄関を出ると、右側に温泉が出ている。


「噴水みたいだねー」と、友里恵は手をかざして。「けっこう熱いよ」


由香は「飲めそうだね」


友里恵「飲んでみな」



由香「いいよ」



噴水みたいになっているから、そのまま飲めそう。



ともちゃんたちが出てきた。


パティは「ほんじゃ、花の木通りの方からいこー」



友里恵は「ほんじゃ」


由香「まか」


パティ「さいきんみないねー」




由布見通りを渡って、斜めの細い路地を入っていくと


コンビニ、みたいな小さなお店があって。


茶色の小さな犬が、立っていた。


友里恵は、犬のそばに行って「よーしよし」と。


しゃがんで。なでなで。


犬は、しっぽを振って、立ち上がって。

ナメている。



友里恵は「ハハ。よせって」と。

顔を舐められて。



パティは「お顔、美味しいんですか」



由香は「お菓子がついてんじゃないの」



ともちゃんは「どの、わんこにも好かれるね」


友里恵は、立ち上がって、わんこに、ばいばーい。

「なんかね。イヌ年だって由香に言われた」



菜由「そーだったっけ?」



由香「牛じゃない?」



友里恵は「そんなにおちちないよ」


パティは「6つあるもん」


友里恵「パティは、牛さんなみ」


パティ「2つしかないよ」




とか、いいながら・・・路地を歩く。

狭いから、車が来なくていいな・・・と思っていると

左から、広い道路が突き当たって。


パティは「これが、花の木通りなの」


駅に近いところは、観光地っぽい

色タイルで舗装されている。


少し離れると、普通の・・・田舎町の風景。



パティは「前は、ずーっとこんなだったんだよ」



さかまゆちゃんは「なんか、見た覚えがあるな。小さい頃来たから、由布院」



愛紗は「いいなぁ、近くにいいところがあって」



菜由は「由布院に来るのはけっこうハイソよね」



さかまゆちゃんは「んー、でも、なんかあるの。KKRもあるし、国民宿舎もあるし」



花の木通りは、駐車場、豆腐屋さん。


友里恵は「あ、このお豆腐。朝ごはんで出たね」


菜由は「ああ、なんか・・・」


納豆と、お豆腐。


なぜか、セットになっていたり。



お水がいいからね、と、愛紗。






左手に、パン屋さん。


いい香りがしている。



友里恵は「食べたいな」


由香は「まだ食うのかよ」



チーズパン、くるみパン。

クロワッサン。


サンドイッチ。


いっぱいあるね、とパティ。



友里恵は「帰りにしよっか。」と言って

「そっか、ともちゃんと、さかまゆちゃんは

帰って来ないのか」



由香「おお、帰らざる・・・・」



友里恵「シェーン、かみばーく!」



パティは「髪ないの?」



菜由は「あったなそれ、毛はえ薬のCM」



みんな、笑う。



お別れでも、楽しくね。




薬屋さんの前の、ぞうさんのマスコットがあって。


友里恵は、頭をぽんぽん。「かわいーね」



由香は「コルゲンちゃんもいたね」


パティは「まえ、ここにもあったね」と。コンドームの自動販売機の前を指差して。



友里恵は「ハハハ。よく見てるなー女子高生パティ」



パティは「こんどーむは見てないよ」



菜由は「ハハハ」



友里恵は「菜由はいいよねー。こんどーむ、なんて言っても

日常だもんなぁ。恥も外聞もなし」



菜由「ババアだっていいたいのか」


友里恵「そんなこと言ってないじゃん」



由香「ハハハ」



駅前通りは、狭いんだけど

両側に並木があって。

それでも観光バスが入ってきたりする。



金曜なので、辻馬車のお馬さん、ぱかぱか。



「あれ、乗ってみたいなー」と、友里恵。



由香「帰ってからね」



友里恵「ともちゃんたちは、帰りがないもん」



由香「おお、帰らざる・・・」



友里恵「シェーン・・・って、さっきもやったぞこれ」



みんな、笑う。



菜由は「マンネリ」


友里恵は、腰をぐるぐる。



由香「それはまんぐり」



愛紗「他人のふり、他人のふり・・・」




由布院駅前は、金曜なので

けっこう人が居る。



TV局の人とか、肩掛けカメラで


タレントさん(?)ふうの女子アナさんかな。4人


賑やかに拍手したり。



友里恵は「なんか、ふるーい演出」


由香「聞こえるぞバカ」



拍手してたひとりも、聞こえたのか、ニタニタ。




ともちゃんと、さかまゆちゃんは「あたしたち、乗務だから。ここで」


友里恵は「うん、淋しくなっちゃうねー。また、どっかで会おうよ、いつか」



さかまゆちゃんも、淋しそうだけど「はい。いつか、どこかで」



旅って、そういうものかなー。なんて

パティは思ったりして。


由布院駅のホームには、普通列車の豊後森ゆき、黄色いディーゼルカーが

2番線に。




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