第351話 おでかけ

菜由は思う「愛紗が大分に来て、駅に居たら。何れ、お父さん・お母さんと

対決することになるな」と・・・思った。


思ったけど、今、明るくしている愛紗の気持ちを考えて

それは言わないほうがいいかな、と・・・・。

何れ、伯母さんが言ってくれるだろうし。

お父さん、お母さんも、いつまでも愛紗を子供扱いはしないかな、なんて・・・

思ったりもして。




みんな、支度して。


ロビーに下りていく。


ともちゃん、さかまゆちゃんは、これから乗務なので。

ちょっと、凛々しいスタイル。





愛紗は、ロビーに下りてきて・・・

ともちゃんたちの、CAルックを見て。



「あれも、いいかなぁ」なんて・・・軽快に言う。


菜由は、その愛紗に「よかったね」と、心でつぶやく。



21歳、まだまだ女の子である。

制服がかっこいいとか、かわいいとか。

そんなきっかけで、仕事を選んでもいいと思う。


愛紗は、いままで・・・・「きっちり」しなくちゃいけないと

自主規制しすぎていて。



それで・・・・頼まれもしないのに

大岡山で、バス・ドライバー不足で困ってるひとたちの為に、と

無理してた。



立派な事だけど・・・出来ない事も、あるものね。




できない自分を、やさしく受け入れる。



そういう生き方を、友里恵たちの自然さに学んだのかな、と

菜由は思った。



乗務員として頑張っている、みんなの姿を

傍観できて。


愛紗自身は、どうなの?と・・・自問する時間が持てたから。



「いい子」でいなくちゃならないと思いこまされてきて。


それが嫌で、故郷から出てきた。

誰も、愛紗に「いい子でいなさい」とは言わないけれど・・・。

彼女自身の自尊心、のようなものが

見えざる脅威を、自分で作っていたかもしれない。




若い女の子には、誰にでもある感情。


基準が何もない「かわいい」「いい子」なんて言う評価。



たまたま、友里恵は深町に「かわいい」と言われて

荒んだ生活を止めた。



誰かひとりでも「かわいい」と言ってくれれば

それだけで生きていけるのだろう。


友里恵は、そうして自然になれた。



その友里恵が、愛紗を自然に帰してくれる・・・・。





「あ、おでかけ?」と、友里恵は

とっとことっとこ。



ともちゃんはにっこり「そう。すこし早いけど。」


さかまゆちゃんも「楽しかった。一緒にいられて」


友里恵は「いつも、乗務員って、こんな風に出会って、別れて・・・だよね」




由香も「そうね。あたしたちはガイドだから、お客さんとずーっと一緒だから

ツアー終わる時って、ちょっと淋しかったりすることあるね。」



友里恵は「いいお客さんだとね」


由香「そう!

「あーあ、やっと終わった」


ってお客もいるねー」



ともちゃんは「あはは。あるねーそれ。」




愛紗は「たしかに・・・・」



さかまゆちゃんは「わたしたちの乗務は、乗り合いだからいいですけど・・・

クルーズトレインだと、そうでしょうね」




菜由は「貸切バスに近い感じね」



友里恵「そうそう!だから、あたしもねー。ガイドよっかいい仕事無いかなーって。

こっちに来ようかと」



パティは、エレベータで降りてきて「そろそろ、おでかけ?」



ともちゃんは「うん。じゃ、いこっか」



KKR由布院のフロントさんはにっこり「ありがとうございましたー」




友里恵は「あれー、まだいるの?」と、フロントさんに。




フロントさんは、昨日の夜から居るので「はい。夜は寝てますけど。これで明け番です」



友里恵は「いろいろ、ありがとー。ゆっくりしてね。明け番」




フロントさんもにっこり。




友里恵たちはもう一泊。





パティは「理沙ちゃんは?」



友里恵は「うん、まだ30分あるから、休んでてもらおうと思って。呼ばなかった」



菜由は「そうだね、それがいいね」



神経を使うから、運転は。



バスとは違う・・・・神経を。





みんなで、KKR由布院から出て。

綺麗に磨かれたガラスの、エントランス。



シャンデリア。



友里恵は「これ、ホコリたかってタイヘンだろねー掃除」



由香は「ビンボー臭い想像するな」



パティは「ハハハ。実感」


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