第340話 向き不向き

理沙は、しかし思う。「蒸気機関車ならいざ知らず・・・・ディーゼルカーや、電車はねー。」


怖いことも多いのだ。

なぜ、機関士を志望するか?

例えば、踏切事故があると・・・。電車の運転士は

落命することもある。

速度が速い割りに、前面の強度は低いし

衝撃吸収構造でもない。

大型トラックが立ち往生していたら、ひとたまりもない。

逃げようもない。


蒸気機関車や、ディーゼル機関車なら

脱線転覆しない限り機関士はまず大丈夫だが。


ディーゼル・カーは速度も低いし

それほど危なくもない・・・・が。


反対に、線路上に何かがあった場合、怖いこともある。

ホームで人に当たったりすると・・・。



そんな理由で、運転士・車掌は多めに人員が配置されている。

車掌は、そんな時事故処理を行う訳だ。


「まあ、女は強いけどね」と、理沙は思う。


弘前に居た頃、客車列車の車掌を一時していた事がある。

無煙化の前で、女の機関助士は無理だから、と言われて

ディーゼルの免許を取るまでの間だった。


そんな時・・・・いろいろあった。



客車列車だから、走りだした列車に乗ろうとして失敗し、ホームに転げた乗客の介抱・・と


か。


自動ドアになるまえの話だった。


北常盤駅の事だった。

ホームは、細かい砂利が敷かれていて

レール付近だけコンクリートになっている、よくある地方の駅で

砂利に足を取られて、飛び乗りに失敗したのだった。


非常ブレーキを掛け、事無きを得たが、もし、巻き込んでしまったら・・・。







乗務員は、そんな側面もある仕事。





そういう経験があるから、バスの運転手をすると言う愛紗に

「無理に怖いこと、しなくていいよ」と言えたのだった。


・・・ああいう、穏やかなお嬢さんは・・・・

CAの方がいいのでは、などと思う、理沙である。


細やかに気遣いが出来、乗客が和めるような人柄。

そういう人は、運転、みたいな荒っぽい仕事には向いて居ない。

そう思う、理沙である。


それは、その人のタイプ。

無理に、合わない仕事しなくたっていいのだ・・・と。

自身、ちょっと無理してるところがあったりもする理沙は

そんな風にも思った。


おじいちゃんへの思いから、大学へ行かずに選んだ鉄道の仕事。



「まあ、いいダンナさん見つけるまでね」とか。


そんなものだろうと思う、割り切った理沙だった。







友里恵は・・・・KKRに戻ってきて。

「みんな、ご飯まだかなぁ」と。



パティは「お部屋に電話掛けてみれば?」



友里恵は「おー、あったまいー」



由香は「誰でも思いつくよ」




友里恵は「あ、でも汚職事件取ってこないと」



パティは「ロッキード事件ですか」



由香は「お食事券だろ」



友里恵「そーとも言うな」



パティは「ニホンゴ、ムズカシイデース」



由香「似合うな、そのセリフ」



友里恵は「じゃ、登るか」




由香は「壁を?」


友里恵「スパイダーマン♪スパイダーマン♪」


しゅっ、と、網を投げて。


ひっぱる仕草。「きょーは、とれたべ」


由香「投網かい」



パティ「ハハハ。エレベータ来た」


フロントの前のエレベータ。

金ぴかの。



降りてきたのは、ともちゃん、さかまゆちゃん。「ああ、おかえりなさい」



友里恵は「金鱗湖行ってたの」


ともちゃんは「鴨ちゃんいたでしょ?」


由香「うんうん。可愛かった」



友里恵「似合わねーセリフ」



由香「うるさい!行くぞ」


友里恵「ああん、行くときは一緒よー♪」


パティは、何いってんの?と言う顔で。


エレベータに。



エレベータの扉が閉じて。友里恵たちは4階へ。



由香は「あのふたりとは、今日でお別れか」


友里恵は「♪きょーでーおわかれー♪」と、ハンバーグ顔。


パティは「似てる似てる」



由香は「友里恵と一緒だと、なーんも考えないな」


友里恵「いいでしょ♪」



パティ「うん。面白いもん」



由香「そだな、考えてもしょーもな」



友里恵「愛紗もそれで明るくなれたじゃん」



由香「なーるほど。友里恵、いい子いい子」と、アタマを撫でた。








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