第288話 ぶんご おぎ

豊肥本線特急「あそ」3号は、結構な速度で坂を下って・・森の間の駅に停まる。



友里絵は、ベーコンエピをちぎって食べながら「ぶんごおぎ、だって。

来るとき、ぶんごもり、ってあったよね」


と。

ほんとに森の中、と言う感じ。駅名看板が、木のままで。白いペンキに黒い手書きの字で


ぶんご おぎ。 荻だけ大きいの(^^)。



由香は「そういえば、恵さんも荻だけど、ここの町かなぁ」



友里絵は「じゃ、ゆかは青島だから、あっちに住まなきゃ」


由香は「ハハハ、んなわけ・・・あるのかな。ご先祖様があっちか」



友里絵「都知事と同じ、青島です」と、敬礼。



菜由「古い」


友里絵「なはは」


さかまゆちゃんは、静かだなー。と思ってたら・・・寝てた(^^)。


ともちゃんも。



友里絵は「朝早いのかな」


由香「さぁ・・・でも、そうだよね。SLあそBOYって、9時頃でしょ出発。」


8時頃には準備があるだろう、ワゴンだし。

その前に点呼がある、と・・・なんとなく連想する由香。



それでも遅いほうだな、と

愛紗は思った。


その前の日が何時に終わったにしても、時間が不規則だと

中々・・・「はい、寝ます!」ってわけにもいかなかったり。



「旅する娘ってのも・・・過酷だね」と、菜由。



「寝かせといてあげよ」と、友里絵。


しずかーに、しずかーに。


ひそひそ話すとかえってうるさい(笑)。




すこーし、曇り空の豊後荻駅。

静か。ホームに、にゃんこが2匹・・・とことこ。


ホームからそのまま、外へ出て行って。

お散歩。




友里絵は「たまもお散歩してるかな」



由香は「ああ、高森の?」



友里絵は、こっくり。





そのうちに、大分側から・・・上りの赤いディーゼル・カー。

おなじ特急「あそ」だろうか。

ゆっくりゆっくり走ってきて、停車した。


こちら側、出発信号が、青になる。



車掌さんの笛が吹かれて、ドア、閉!。


バタリ、と。バスのような折り戸が閉まる。



「あ」さかまゆちゃん、目覚める。


ふんわり。眠たそうにしてる。

白い頬に、切り揃えられた髪が掛かって、かわいい。


「寝ちゃいました・・・」(^^;と。



ともちゃんは、まだ寝てる(^^;



でも、さかまゆちゃんが起きたので、「あれ?、ここ?どこ?あれ?」

あたりを見回すともちゃん。


前髪が、ちょっと目深に見えて。

フランスのお人形さんみたいな、すっきり顔。でも、眠たそうだと

なんか、かわいい。

天使さんみたいに。



「あー、寝ちゃってた。あれ?乗務?どうしたんだっけ」



さかまゆちゃん「回送回送」



ともちゃん「あ、そっかー」




列車は、かたこと。動き出した。



窓枠に、バッタが止まっている。



友里絵は「あれー、こんなとこに」



由香は「落っこちないかなぁ」


愛紗は「赤い列車だから、お花と間違えたのかな」



菜由「そうかも」



がらがらがら・・・と、走り出す特急「あそ」3号。

でも、下り坂だから、すぐに直結2段に入れて

エンジンブレーキ。


カーブを、ふんわり回っている。



パティが、ワゴンを押して戻ってきて「くつろいでますか?」


みんな「はーい」と、にこにこ。


パティは「ジュースとか、いる?」



由香は「そうね。ブラックコーヒーとか。冷たいの出来る?」



パティはにっこり。「はい」と。


淹れ立てのコーヒーが、ポットに入っていて。

それを、氷の上から注ぐ。



いい香り。


別に、氷を満たしたカップに。それを入れて。「どーぞ」



友里絵は「いー香りだね」と、わんわんルックのヘア・スタイルで

お鼻をひくひく。(^^)。



愛紗は「かわいいね、その髪」


友里絵「へへ」



由香「昔はこうだったもんねえ」



菜由「あ、なんか想像できる」


幼稚園の青いスモック着て。


ちいさい友里絵。


お花のかたちの名札とか。黄色いかばんもって。

とっとことっとこ。



ドロ団子捏ねたり(笑)。



由香「このまんまだけど」



ハハハ、とみんな笑う。


パティは「かーいーもんね」と、にこにこ。







人吉駅のまゆまゆちゃんは・・・。


上り特急「あそ5号」14:10発に乗務するところ。

下りで着いた編成が、待機線でお掃除されていて。


丁寧に、肘掛を拭いたり。窓を拭いたり。

フロアをお掃除したり。ゴミを出したり。その作業を見ていた。


やがて・・・・編成が入ってきて。


3号車の、業務扉からその、荷物を出したり。

大きなビニール袋のゴミを出したり。

そんな作業を見ていて。


重そうだから。



「ひとつ持ちます」と。


お掃除のおばちゃんは「いいよいいよ。これから乗務だろ」と。にこにこ。



それでも、ひとつだけ。


ホームを走るカートまで乗せてあげた。


お掃除のおばちゃんは「ありがと」と。日焼けした顔でにっこり。

農家のひとかな。



いえいえ・・・と、まゆまゆは

にっこり。


黒いスーツ。この仕業、CAと車掌補業務。

検札、出札があるので少し、緊張。




と言っても、もう慣れてはいるけれど。




お手伝いして、ありがとう、っていわれると

うれしい、まゆまゆだった。(^^)。







EF81-137、車上のお兄ちゃんは

ゆっくり待機中。


鹿児島本線、特急は高速。振り子式車両もあるので

110km/hを超えて走るダイヤもある。


そういう時、客車回送のこの列車は

電車を先行させる。


寝台特急もそうで、大きな駅では

よく、電車に追い抜かれる。



こういう時間は、割と、のんびり気が抜ける。

無線に気をつけていればいいのだ。



乗っていて、転動、と言って

列車が動いてしまう事がなければ大丈夫。




しばらくすると・・・・。



しゃー・・・と言う、車輪がレールの上を滑る音がして。

銀色の特急車両が、風を巻き上げて通過していく。


カーブなので、すこし傾いているのがよく判る。



しゃーん、しゃーん、しゃーん・・・・。新幹線のような音だ。



テールサインだけが赤い。




「すごいスピードだな」と、お兄ちゃんは思った。


130km/hは出ているだろう。




でも・・・やっぱり機関車がいいな、と。

機械に囲まれて。背中で大きな音を立てて回るブロアーと

モータ、トランス。セミコンダクタ。


大きな機械を操る面白さは、機関車だ、と・・・思う。



出発信号機が、青になる。



出発、進行!




信号を指差し。




停止する時に、編成連結器ばねを伸ばしておいたので

そのまま、機関車単弁を解放。ゆっくり1ノッチ。

感覚が微妙で、機関車ブレーキが開いてしまうと「ドン」と出てしまう。

そこが、個体差がある。



137号機は、割と硬いほう。

ゆっくり開いたほうがいい、ようだ。






改札を出る前に、車掌区に寄って、明日の乗務時間を確かめた恵。


「8時か、楽だな」



でも7時には来て居ないと、何か遭ったら困る。



まあ、徒歩通勤だとそんなに困らないけど。

バイクとか車、なんかだと

故障とか事故、なんてあると・・ね。



徒歩で困るのは、痴漢くらいだろうけど。


恵は、カンフーを習っていたりする。



「アチョ!」と、回し蹴り一発!(^^)。



「ブルース・リーになれるかな?」



と、どっかしらコミカルな恵である(^^;

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