第272話 SLあそBOY

いつしか、雨も止んでいた。


立野駅の豊肥本線ホームの端っこは、屋根がないので


友里絵は、空を見上げて。「雨止んだね」と、にっこり。


雲が、真っ白。



ケータイで、メールを打とうとした友里絵。



放屁ほんせん、と出てしまって。「臭いじゃん」と、ひとり怒る(笑)。


変換しなおし。


包皮本線、と出るので「皮かむりかい」(^^)。



ケタケタ笑っている。



由香「ひとり上手なやつ」(^^)。


友里絵「ひとり遊びと言わないでー♪」(^^)。


由香「いつもひとりで指アソビ」


友里絵「それはあたしのセリフ」



菜由は「まあ、誰も居ないからいいか」と、思っていたら

崖の上が道路で、バスが停まってて。


タクシーのおじさんたちが聞いていた(笑)。


「おもしろいお嬢ちゃんじゃのー。」




そのうちに、坂を登ってくる列車。


ゆっくり、ゆっくり。


煙を吐いて。


しゅっ、しゅっ。



友里絵は「あ、来た!」


黒い機関車は、ゆっくり、ゆっくり。


しゅ、しゅ、しゅー・・・・。

煙を吐き出しながら。



58654、と書いてある。



友里絵は「従業員番号みたい」と、仕事を思い出した。



由香「何番だっけ?」朝、アルコール検査するとき打ち込むのだ。


友里絵は「201254」


由香は「そう。あたしは201253」



友里絵「一緒だね、愛紗は?」


愛紗は「201185」


友里絵は「それだけしか違わないんだねー。一年違うのに」



菜由は「ああ、いろいろあるからじゃない?ガイドってその頃から契約になったから」



友里絵「なるほど。タマちゃんは因みに509037だった」



由香「覚えてるのもすごいなー。算数はダメなのにな」



友里絵「ダメじゃないよー。九九くらいは出来る」


菜由「そりゃできるよ。小学校でやるもん。でも使わないね」



由香「ほんと。電卓があるもんね」



愛紗「なんで、深町さんだけ50---なのかな」



友里絵「知らなーい。契約だからじゃない?」



菜由「なるほど」



由香「正社員にならない、ってあたりがあの人だね」



友里絵「でも最初は、3年たったら正社員になるつもりだったんだと」



菜由「でもアレでしょ。ゴジラが迫ってきたから」


友里絵「そうそう」


由香「他にもいたしな。」



菜由「ゴジラvsキングギドラか」



いっぱいいたもんなぁ、そういえば。と

みんな笑いながら



「タマちゃんはあたしのもんだもーん」と、友里絵。



由香「そうだよね」


列車は、1番線に停まる。島式ホームの山側。


これから、スイッチバックを登って。

阿蘇山へと向かうのだ。







真由美ちゃんは、折り返しの吉松駅。


なんにもないので(^^;


制服で、駅前にいると

仕事になっちゃうし


事務室にひっこんだ。




「こんにちはー」と。



駅長さんは「ごくろうさーん」と、のんびり。

かわいい女の子には優しい(^^)。



事務室の端っこにある椅子で、バッグの中のケータイを見ると


友里絵の返信。


「この人をコイビトにしちゃえ!」って(笑)。



真由美ちゃんは「愛紗さん」と。



そういえば、オスカルの写真、みてないなー。

そう思って。


お兄ちゃんの写真を添えて



「愛紗さんのオスカル姿、作れますか?」



と、お茶目な真由美ちゃん。



「あ、そろそろ列車」



折り返し20分なのだ。









お兄ちゃんは、その頃・・・・。

福岡貨物ターミナルで、のーんびり。


貨物のダイアは余裕がある。遅れるからだ。


台風なんかがあると、その代わりにせせこましくなるけど

今は平気。


のんびり休める。


帰りも、おまけに客車回送だから、荷が軽い。



ごはんを食べて。



休憩室に行った。



休憩室は、仮眠も出来るようになっているので

静かだ。


「その代わり、寝過さないようにしないとな」と。


ベッドのタイマーを掛けた。



これは、有名な仕掛けだけど

ベッドが、時間になると起き上がる。


セットし忘れたら終わりだが(^^;



何しろ朝4時に起きると・・・・10時だと

そろそろ、眠くなる。


自然の摂理である。




「少し寝るかな」


細切れに寝るのが上手になる、この仕事。




(因みに、路線バスもほんとはこういうダイヤだったが・・・・

近年は、その昼休憩を45分しか取らないところも多い)。







恵は、どうやら人吉駅に着いたものの。

裏側だったので

ぐるーっと回って、結局踏み切りまで回ることになった。

柵を乗り越えちゃえ!と思ったが


さすがに職員である。そういう事はしたくても、できない。




「やれやれ・・・・。」




楽しい休日である。


酔っ払って、人の家に転がり込んで。

縁談を持ち掛けられて、逃げて(笑)。

崖で遭難しかけて。熊に食われそうになって(?)

犬に救われた。


「寅さんかいな」(^^)。




明け番ー公休ではないので

明日はまた、乗務である。



「こんな生活じゃ、恋愛どこじゃないね」と・・・・いいながら。


てくてく歩いて。



「あー!なんでこの駅、裏口ないのー!」と、叫びたくなる(笑)。


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