第116話 littleちゃん

研究者である深町は、今では、なぜ危険なバスの仕事に使命感を感じたかが

よく判る。


それは、動物だから。


その一言に尽きるのだけれども。

群れ、のような社会を持って、かつては生きてきた人間。

それが希薄になり、損得の為、利己の為。

そういう考え方が面倒な(笑)だけだ。


相場師のように、常に損得を伺いながら生きるのが。


「それよりも、大事なものがあるさ」



なので「群れ」として、友里絵や由香たちのような

弱い立場の者を擁護しなくてはならないと思い、親切にした。


それだけだ。



バス・ドライバーも、運転している間は乗客を守る使命がある。

そういうドライバーでないと、長くは続かない。


なにせ、満足に睡眠も取れず、食事の時間も不規則。

走り出せば緊張の連続。事故を起こせば責任。

ヘタをすれば交通刑務所であるーーーー。






深町は、東京メトロ丸の内線を東京駅で降り、地上に出た。

地上の空気もそれほど綺麗ではないが、地下よりはマシだ。


新幹線に乗るために、そのまま線路に沿って歩く。



研究の仕事は、バスに比べると遥かに楽だけれど

なんとなく・・・・不正を働く連中が目障りに思えた。



「バスの時もそうだったけどな」と、思いながら

新幹線に乗るために改札を通る。

北通路、と呼ばれる

観光客があまり通らない、狭い通路を通って新幹線ホームに向かう。

元は貨物用トンネルだったというその場所が、深町は好きだった。









一方、指宿の愛紗たちは・・・・・。



愛紗と菜由は、305号室で海を眺めながらのんびり。



友里絵が、ぱたぱた、と歩いてきて。

ドアはオートロックではないので、ぱた、と開いて。


「ただいまーぁ。あー、楽しかった。」と、にこにこ。「ここ、砂湯があるんだねー。」



由香も後ろから、バッグを持って「友里絵が、リトル、あ、あの犬ね。と、仲良くなって」

と、楽しそうだ。




菜由は「ほんと、犬好きだもんね友里絵ちゃん。タマちゃんもそうだけど。」


愛紗は「そうなの?」



菜由は「うん、ほら、原田駅の前にね、焼きそば屋さんがあって。あそこでね・・・

いつも、ブルドックが寝てるの。大きい。」



友里絵は「あ!それ知ってる!。100円バスの乗務の間に、駅待ちしてて。

いつもタマちゃんは、ブルちゃんに声掛けるんだって。


「ブールちゃん?」って(^^)。」



愛紗は「そうなんだ。かわいい犬?」



友里絵が「うん、愛嬌があってね。大きくて。いつも道路で寝てるんだけど

みんな避けて歩いて。

でもタマちゃんはしゃがんで。

お手手持って「おはよー。」ってするんだけど。


ブルちゃんは舌だしたまま、寝てるの」



菜由は「おもしろいね」




由香が「それを佐藤さんが見てて、『面白いなあ、あいつ』って。」


佐藤は、古参のドライバーで、ふそうの中型の旧タイプが担当である。

このふそう車は、力があるのでドライバーに好まれる。

「さすがは戦車を作っていた会社」だとか。

確かに故障も少なく、いいバスだ。









「待たせてごめんね、じゃ、お風呂行こうか?ご飯?」と、友里絵。



由香は「新婚さんみたいだな」



友里絵は「あなた、お風呂にする、ごはん?」と、メイドさんみたいな口調で。



由香は「いや、寝る」


友里絵とふたりできゃーきゃー(^^)。



・・・JKかいな(笑)。




菜由も笑いながら「ごはん6時からだから、お風呂行ってこよ。砂湯も入るかな」


愛紗は「そうだね。砂湯。別府にもあったね」


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