第65話 旅好きなタマちゃん

「でもさーぁ、友里絵って阿蘇とか指宿とか、霧島とか。

良く知ってるね。」と、由香。



「ああ、これ、タマちゃんが行ったんだって。串間も素敵だってさ。

野生のお馬さんが歩いてて」と。友里絵はにこにこ。


「キミの情報はタマちゃん系だな、だいたい」と、由香。



「へへ。バイト仲間だったし。あのお店暇なんだもん。」と、友里絵。





「まー、宮崎はまた今度にして。今回は指宿と熊本、由布院かな。」と、由香。




「そうしようか。」と、友里絵。



「ごめんなさいね。私が」と、愛紗が詫びる。


「いいのいいの。そういう事ないよ。どうせ、全部は回れないし。」と、由香。


「駆け足で回ってもなんかね。ツアーバスみたいだし」と友里絵。



ハハ、とみんな笑う。



普段がそういう旅だから。



休暇はのんびりしたい。




「タマちゃんはどんな旅してたの?」と、由香。



「んー。だいたい、一箇所に3日くらいは居るって。仕事が無い時にね。

タマちゃんが旅行好きなんじゃなくて。お母さんが旅好きなんだって。」と、友里絵。



「いいタマちゃんね」と、伯母さん。



「そうでしょ?」と友里絵、にこにこ。


「キミが喜ぶことか?」と、由香。



友里絵は「なんとなくね。へへ。なんでもね。タマちゃんが言うには・・・

『母は、家に居ると働かなくてはならないと思い込まされて育ったから、

旅に出ないと安心できない』んだと。ウチのお母さんとは違うなー。」




「なんか、わかるな。それ」と、愛紗。



伯母さんも頷く。「そういう人、居るね。」




「なんか、かわいそうだね、それ」と、由香。



「まー、あたしらみたいな不良には無縁な話だ、ハハ」と、友里絵。


「笑っていいのか?」と、由香。


「いいともー!」と、友里絵。


「ダメだこりゃ」と、由香。



みんな笑う「それも古いね」と。



「さ、寝ましょ。明日はわたしも駅だし」と、伯母さん。


「何時からですか?」と。由香。


「8時頃でいいの。委託だから。」と、伯母さん。



「ごめんなさい、騒いじゃって。」と、由香。



「いいのよ、楽しかったわ、若返ったみたい。」と。伯母さん。




「じゃ、寝よ!」と、友里絵。


「そだね。明日何時?」と、由香。



「6時くらいに起きればいいけど、習慣で起きちゃうんじゃない?5時くらいには」と

愛紗。



「そうだねー。ハハハ」と、友里絵。



「じゃ、早く寝よ」 もう10時である。


結構喋っていたなぁ----。





愛紗は、二階の自分の部屋に行って。

窓を開けて、少し風を入れて。



久大本線のディーゼル・カーが

かたかた、かたかた・・・と

軽快な音を立てて下っていく。


「これだと、始発には起きられるね」



貨物列車の通らない今の久大本線だから、夜は静かだ。




愛紗の部屋は、和室なので

お布団を敷いて。



着替えて、横になると


「疲れてるなー」と、実感した。


肩や腰のあたりが。


運転実習もあったから、まだ、股が開いたような

ヘンな感覚が残っている(笑)。


普段、股を開く事ってないから。



横になって思う


「深町さんは、それで幸せなんだろうか?」



それは、自分への問いかけでもあったりする。



「自らの幸せって、なんだろう?」



そう思っているうちに、眠りが・・・。








階下では、友里絵と由香が

楽しそうにお布団を敷きながら。


「修学旅行みたいだねー。」


「うんうん。あたしたちって泊まり勤務ないしね。」


その辺りは有馬課長の配慮で、若い未婚ガイドに泊まり勤務は

させなかった。



不祥事があったら大変だし、なによりガイドの人生にも関わる。



そういう事件も、業界では幾つかあったのだ。


不幸なガイドが生まれるのは、有馬にとっても辛い事だから。


有馬は、そういう人間だった。



九州男児である。


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