第52話 愛着

「ごはん、ここで食べていっちゃおうか」と、伯母さん。


「そうね、今から作るんだと・・・。」と、愛紗。



「ここ、ご飯も出るの?、わー、楽しみ」と、友里絵。


「郷土料理とか」と、由香。



お風呂から上がって。服を着た。


慣れている人は、浴衣を持ってきていて

それで大広間で休んだり、ご飯を食べて


また、お風呂へ。


温泉を楽しんでいる。




「食堂へ行きましょうか。」と、伯母さん。



「はーい。」と、三人。



レストランでなく、食堂と言う辺りに温かみがあって

いいなぁ、と、愛紗は思う。


スリッパで廊下を歩いて、広間の反対側の食堂。


硝子のショーケースに、お料理のサンプルがあったり。


「なんとなく、懐かしいね。」と、愛紗。



「観光バスの仕事でよく行く、サービスエリアみたい」と、友里絵。


「東名とかは、古いものね。」と由香。




「何が出来るのかな・・・普通のメニューもあるね。ラーメン、カツどん、カレー。

安いね。ラーメン300円」と、友里絵は麺が好き。



由香は「割り干しの煮物・・・。なんだろ、沢庵みたい」



伯母さんは「そう。大根を割って干したの」



由香は「へーぇ。だんご汁。あ、これは知ってる!」



有名だもんね、と、愛紗。


「焼き米はないね」と、友里絵。


「あれはないね」と、伯母さん。


「ほんとの郷土料理なの・・・『やせうま』?」と、友里絵。



「お団子みたいなのね。きな粉付けて食べる」と、おばさん。



「梨のコンポート、グラニータ。」と、由香。


「梨が名産なの」と、愛紗。




「じゃ、なんか食べようか」と、伯母さん。




食券を買うタイプ。



「なんか、これもサービスエリアみたい」と、由香。


「ほんと」と、友里絵。



「あたしは、スパゲティかな。ボンゴレ」と、友里絵。


「ほんとに好きだね。友里絵」と、由香。



「食材がここのだから、味が違うと思うよ」と、愛紗。


「なーるほど」と、友里絵。



伯母さんと愛紗はきょうの日替わり。


小さなお蕎麦、冷たいのと、親子丼。

やせうま、割り干しの煮物、漬物。

天ぷら。だんご汁



由香は「じゃあ、あたしはとり天定食!」と。


「ちょっと、面白い味よ、それ」と、伯母さん。



「やせうまとか、だんご汁はうちで作ってあげる」と、伯母さん。



「へへ、いただきまあーす」と、友里絵。


窓際のテーブルに座ると、川、大分川がカーブしていて

沿って、国道。


土手のようなところに、この建物が建っている。



「台風で良く流されるの、この辺り」と、伯母さん。



「平地がないですものね」と、由香。





土曜だけど、そんなに人は来ないので

のんびりできる。






「いっただっきまーす」と、友里絵は

楽しそうにボンゴレを。


「タバスコかけるとロッソになるぞ」と、由香。



「辛いの苦手」と、友里絵。



賑やかにお話。



おばさんが「そうそう、もし良かったら、わたしの仕事を手伝ってくれてもいいわ。

アルバイトね。そういう事は割とできるし」


伯母さんの夫が、国鉄職員だったし

元々は運転士で、定年が近づいて駅員になって。

先立ってしまったから、伯母さんは生活には困っていない。

ただ、鉄道に関わる事が、生活の張りになっている。


夫が生涯を掛けた仕事だから。



「いいね、それ」と、由香。


「試験に合格するまでかー。」と、友里絵は

スパゲティを上手に食べている。


「あさりが美味しいね」と。



「地場じゃないかなぁ」と、愛紗。


「うん、新鮮新鮮!」と、友里絵。



愛紗は「いきなり東山を辞めるのも・・・」と、気兼ね。



由香は「でもさ、有馬課長も野田さんも、社長もいい、って言うよきっと」



友里絵は「そう!タマちゃんが辞めた時も『いつか戻って来い』って言ってたもの。

みんな。」



愛紗は「・・・そうかなぁ」



由香は「そうだよきっと。みんないい人だもの。」



愛紗は「・・・でも私、何がしたいんだか分からなくなっちゃった」



伯母さんは「そういうものよ。私だって鉄道が好きな訳じゃなかったもの。

やってるうちに、愛着が沸いてくるのね。」



「ま、友里絵の場合は『タマちゃんが居たから』」ね。と、由香。


「由香もそうじゃん」


「あたしは、友里絵がいたから。」



「いいねえ、仲良しで」と、伯母さん。にこにこ。



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