第10話 【クエスト受注】
翌朝、俺たちはクエストを受注するために冒険者ギルドへと訪れていた。
クエストボードには薬草採取、火打ち石の採取、ホワイトラビットの討伐といった内容ばかり……さすがに低ランクの冒険者が多いミズイガルムの冒険者ギルドでは簡単なものしかないか。
さて、どうしたものか――。
すると、隣でクエストボードを見つめていたアンジュが声をあげる。
「先生!! このクエストとかどうですか!?」
「――どれどれ?」
――――――――――
適正ランク: D
依頼内容: 風吹草の採取(一〇枚)
期限: なし
報酬: 金貨 二枚
――――――――――
「風吹草か。この辺りだと確か……『まどわしの森』を越えた先の『ヘミング峡谷』で採取できるのだったか」
「ヘミング峡谷??」
「『ヘミング峡谷』は『まどわしの森』よりも高ランクの
「おお! それはとーっても興味深いです!!」
問題は適正ランク……だが、昨日の成果を報告すれば問題はないだろうな。
「――よし、これにするか。早速受付へ行くぞ」
「はい!」
俺たちはクエストボードから依頼書をはがし、受付へと向かった。
冒険者ギルドは今日も繁盛しているようで、受付の空きは一つだけ。
そこは先日と同じく、ミーアの担当する受付であった。
「あ、ヒュージさん。おはようにゃ」
受付に座るとミーアが挨拶をした。
「ああ、おはよう」
そしてミーアは首を傾げながら、
「隣の方が噂のアンジュさんかにゃ?」
アンジュをじっと見つめた。
「は、はい! アンジュです。よろしくおねがいします!」
「有名人に会えて光栄にゃー」
「へ? 有名人??」
「昨日の熱い言葉は村中で話題になっているにゃ!」
ミーアはそう言うとニヤッとした笑みを浮かべる。
「えええ!! なんでそんな話題に!?」
「そりゃあそうだろう。この村では高位のCランク冒険者にEランク冒険者が喧嘩を吹っ掛けたんだ、話題にもなる」
「あわわわっ!!」
アンジュはニヤニヤするミーアと対照的に、両手を頭に当て何やら慌てている様子だ。
ミーアは先ほどまでのニヤけた表情から一転、真剣な眼差しでアンジュを見つめながら、
「――冗談はさておき……実はアンジュさんには個人的にお会いしたかったのにゃ。昨日、絡まれていた
そして立ち上がり、深々と頭を下げた。
「えええ! そうだったのですか! でも私は自分の気持ちに正直に行動しただけで……ですので、どうか頭を上げてください」
「そうだな。それで騒ぎを余計に大きくした」
「うぅ……」
「これからは結果を考えてから行動するように。冒険者としてはとても大事なことだ」
「はいです……」
予想していなかったダメ出しが堪えたのか、アンジュは萎縮してしまった。
――叱りつけるつもりではなかったのだが……やはり人を育てるというのは中々に難しいものだ。
なにかフォローを入れてやるべきなのだろうが、どうしたものか。
そう考えていると、ふとミーアと目があった。
そしてミーアはやれやれといった表情をしたのち、
「あははにゃ! でもアンジュさんは可愛らしい見た目とは裏腹に芯の強さがある人だと思うにゃ。きっと大きいことを成し遂げてくれると期待してるにゃ! 頑張るにゃー!」
「はい! ありがとうございますっ!」
さすが冒険者ギルドの受付といったところだろうか。
冒険者の持ち上げ方も熟知しているようだ。
ミーアのフォローに感謝しつつ、本題を切り出す。
「――それで本題なのだが……昨日の成果の報告と、クエストの話を聞きたい」
「わかったにゃ。じゃあまずは成果の報告からにゃ。ギルドカードを出して欲しいにゃ」
俺とアンジュはミーアにギルドカードを手渡す。
ミーアはギルドカードを机の上に置かれた装置に差し込む。
するとミーアの眼前にはギルドカードに記録されたのであろう情報が宙に浮かぶように表示された。
「にゃにゃにゃ!! Dランクのゴブリンを討伐したのにゃ!? しかも二〇体も! それにEランクのホワイトライビットが一〇にイエロースネークが五!」
そしてミーアは手元の資料を確認しつつ、
「――となると……やっぱりそうにゃ! おめでとうにゃ、二人は既定のポイントを超えたのでDランクに昇格にゃ!!」
ミーアは拍手をしながらそう話す。
「えええ!! も、もうDランクですか!?」
「ああ、ありがとう」
「アンジュさんに比べ、ヒュージさんは淡々としてるにゃー……Dランクへの昇格は確かに簡単だけど、一日での昇格は異例にゃ。もっと喜んでくれてもいいにゃ!」
「――そうか。こういったものに慣れていなくてな。……それで、このクエストを受けたいのだが」
俺は風吹草の依頼書を机に提示した。
「そういうところにゃ!! ――それでこの依頼書は……ああ、風吹草かにゃ。適正ランクはDだけど、風吹草が自生する『ヘミング峡谷』はCランクの
俺はアンジュの顔をうかがう。
するとアンジュは問題ないと言わんばかりに、大きく頷いた。
「ああ、大丈夫だ。問題ない」
こうして俺たちの初クエストが受注された。
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