第784話 記憶と愛着

「次の駅まで、どのくらい?」と

ミシェルはふつうの声になって、そう言った。



「1時間くらいじゃない?」と、めぐは

よくわからないけど、そう言って微笑む。






そういう、曖昧に微笑むところを


ミシェルは、愛らしいと思っていた。



ふんわりとしていて。柔らかくて。




女の子なんだな、って感じる。





「もう寝よう?明日早いし、あたしたち」と

アルバイトの事をめぐは思い出して。



とりあえず落ち着いたミシェルを促して




寝台に戻る。






ゆっくりと、列車は進む。



夜の旅を楽しむかのように。










ミシェルは、リサや母にいわれると

反発しそうな言葉、促されたりする事も


めぐに言われると、反発する気持ちに

ならなかった。




制御されているような気持ちに

ならなかった、と言うのもあるけれど




それも、やっぱりめぐの思いやり、なのだろうし



めぐが、リサや母よりは

ミシェルの病弱だった頃を知らない、そういう

事もあって。



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