第373話 moonlite feels lite

その、磨りガラスの扉は


めぐたちが訪れると、がちゃり、と開いた。



見かけないハンドルが、ガラス窓の側の


収納箱みたいなところから生えている(笑)。



珍しいな、と

れーみぃ。




「そ。こりはな、ブレーキはんでの」

と、リサのおじさんは、愛嬌のある

お国訛りで




こり=これ

(笑)

はんでの=なので。(笑)





通訳が必要な程、変わった言葉の響きは

フランス語のように、流暢で


若干、鼻に掛かった言葉(笑)。


寒い地方なので、口を開かないで

済むように発達した、などと



民族学者のうち、生態学の

知識がある人は

そんなふうに言う。





南の方の人が、比較的言葉数の多い

言語であったりするのも


気候などの環境の影響、などと

言われたりもする(笑)。




本当かどうかは不明だけど(笑)


でも、確かに寒いと

ものぐさになるのから



なんとなく、実感できたりもする(笑)。


猫などは、冬になると

じっとして、おとなしくしているし。





北の方の冬は厳しく、口を開けると

雪が舞い込んだりする、なんて



まことしやかに語られたりもする



bluemorrisの、リサのおじさんは



いかにもそれらしく、朴訥である。





リサは、その北の大地で

列車に揺られていた。




海岸沿いを南に下る、茶色の木造客車は


なつかしい、おじいちゃんの思い出が

残っているような列車だった。





暗くなると、電灯が点くけれど


暖かみのある黄色い電灯で、車輪が回ると


ゆらゆらと

明るさが変化した。



その、ゆらゆらが

なんとなく、不思議な

安堵を


リサに与えた。



かつては、蒸気機関車が率いていたその客車。



屋根にはまだ、煤が残っているかのようで



窓枠の隙間は、石炭がらで

黒くなっているような


そんな気がして

リサは、懐かしくなった。




おじいちゃんが、まだ

この列車と一緒に走っているかのようで。





車窓ごしに、田園の風景と


木造の看板は、テレビはフィリップス、なんて

書いてあったりする、ブリキの看板が丸太の塔に乗っていたり。




ふと、微笑んでしまう。



自分は、なにを悩んでいたのだろう。




と、思い返すリサ。



思い込みなどと言うものは、そうしたものだ。



気分が変われば、消え去ってしまうのだけれども



人間は、その気分を制御するのが難しい。




生物的な神経内分泌の回路が



あくまで動物的な仕組みで動いているからである。






ある、神経内分泌物質がある限り

特定の

気分は変わらない。




おおまかに言うと、不安も闘争も

同じ、自分を守るための気分で


動物には一番重要な気分、であるから

それに結び付く悩みは


しばし、起こる。



リサの場合も。

動物と違って、人間は

想像と連想ができるので


それで、悩む。


現実と想像が違うので悩んだり

想像上に危ない事がないかと悩んだり。


つまり、現実だけを見て希望を持たなければ


悩みは起こらない。



わが身の存続も希望である。





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